彩球オーディオ俱楽部

73回作品発表会

 

 

 

 

2023107()に、埼玉県久喜市にある久喜市総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ俱楽部の第73回作品発表会が開催されました。快晴の三連休初日の土曜日とあって絶好の運動会・行楽日和となりましたが、当倶楽部の発表会にも120名あまりの熱心なオーディオファンが集まりました。

 

今回は第1部が会員6名の作品発表、第2部が協賛企業であるゼネラルトランス販売株式会社様の製品デモンストレーション、第3部が「真空管アンプで聴くストリーミングオーディオ (2)」というテーマで篠義治氏の講演がありました。

 

 

会場の久喜市総合文化会館

 

 

当倶楽部の樫村幸三会長の開会の挨拶に続き、MJ無線と実験誌ライターの岩村保雄先生から「今、真空管を使ったMCアンプを作成しています。皆さんもいろいろなものにチャレンジしてください。」というメッセージをいただきました。

 

 

    

岩村先生の挨拶               会場のようす

 

 

第1部 作品発表

 

いつもの発表会と同様に25分の持ち時間の中で課題曲を2分ほど演奏し、出品者が選んだ曲を数曲演奏するという形式で進められました。課題曲はAnna Carvenの「Don’t Know Why」(MJ無線と実験 MJCD-1012 オーディオ・テクニカルCD No.13)です。

 

 

(1) 中澤 雅生 6AR6WA(T) シングルアンプ(3W

1番手は私のアンプです。高μ双三極管6SL7WGTの両ユニットを並列接続し、三極管接続した水平偏向ビーム出力管6AR6WACR結合で駆動するシンプルなアンプです。出力トランスにはISOタンゴ製のU-8083.5kΩで用いています。電源トランスはゼネラルトランス製のPMC-170M、整流管は5AR4です。無帰還ではダンピングファクタが1.7程度だったので、2.5以上を確保するため3dBのメジャーループNFBをかけることにしました。自宅ではこのアンプにダイヤトーンのP-610を接続し、LPレコードなどを楽しんでいます。

 

小出力アンプなので、小編成の楽団によるクラシックとジャズ、それに学生時代に購入した197080年代のポップスを選曲してみました。ロクハン・フルレンジ用に作ったアンプですが、元気にアルテックA5型のシステムを駆動してくれました。

 

 

      

 

 

(2) 吉田 幸吉氏 WE349A シングルアンプ(3W

吉田氏のアンプは、高μ三極管6SF5GTで五極管接続したWE349CR結合で駆動するシングルアンプです。インピーダンス7kΩの211用大型シングル出力トランスを使っているのが特長で、6dBのメジャーループNFBをかけています。電源トランスの高圧電圧を整流管5AR4で両波整流し、半導体を使って平滑して250VB電源電圧を得ています。出力管は固定バイアスとなっており、アンプ前面に設置されたバイアス調整用VRとデジタル電圧計を使って調整することで、WE349Aのほかに6F642といった五極出力管も使用可能です(ソケットは変換アダプタで対応)。古風なシャーシは50年ほど前にジャンクで購入した計測器を流用したそうです。

 

 低域から高域まで、広帯域でとてもバランスよく表現されています。大型出力トランス使用の効果でしょうか。ジョン・コルトレーンの柔らかなサクスホーンにうっとりしてしまいました。Ladia Grayの歌とギターの響きも抜群でした。

 

 

 

 

 

(3) 久保 真岐氏 PT25HT)トランス結合AB2級プッシュプルアンプ(12W

 久保氏のアンプは、716日に開催されたMJオーディオフェスティバルに出品されたPT25H三極管接続プッシュプルパワーアンプです。入力信号をサウンドパーツ製の位相反転用グリッドチョークGCH-4で位相反転し、WE448A類似の広帯域電圧増幅四極管6B-R22を三極管接続にしたプッシュプル回路でゼネラルトランス製の段間トランスPMF-14Dを駆動しています。トランス結合により、PT25Hのコントロールグリッドは正電位まで励振されます。出力トランスはソフトン製のユニバーサルRコアトランスRW-40-9.5です。RW-40-9.5にはカソード帰還用のコイルが用意されていますが、無帰還構成のため使用していません。電源トランスにはゼネラルトランス製のPMC-264GHが使われており、両ユニットを並列接続した2本の5U4-GBB電源電圧を得ています。平滑回路は2個のチョークコイルを用いた2段のπ型です。なお6B-R22PH25Hはスイッチング電源で直流点火されています。

 

 トランスドライブ特有の重心が中音域にある力強い音色です。ボーカルが前に出てくるので、ライブ演奏のようなリアルなステージが再現されるのが特長です。加藤登紀子の「時には昔の話を」では、まさにステージ上で歌っているかのようでした。また福山正治が演奏するギターによるコーヒールンバでは、緊張感のある弦が生々しく会場に響きました。当倶楽部の発表会では珍しい4重連のSL走行音などもありました。

 

 

             

 

 

(4) 松本 崇史氏 KT88プッシュプルアンプ TRV-88SE45W

 以前は半導体アンプを使っていたそうですが、15年ほど前にトライオード社の完成品TRV-88SEを購入したところ臨場感のある音色が気に入り、以来ずっと愛用しているそうです。最近英国製のゴールドライオンKT88と東芝製のHiFi12AX712AU7を入手したのですが、アンプの回路には詳しくないため、当倶楽部の会員に真空管の交換とバイアス調整を依頼しました。真空管を交換して楽しむことができるのも、管球式アンプの魅力のひとつです。

 

 広帯域で、かつ力強い現代的な音色です。松本氏は主に196070年代のロックを聴くとのことなので、このアンプの音色は好みに合っていると思いました。1970年代の英国のロックバンドを中心に試聴しましたが、Fairfield Parlourの演奏する「Aries」では、アコースティックギターがとても生々しく再現されていました。今回の選曲にはありませんでしたが、ビートルズの楽曲なども素敵に演奏してくれるにちがいありません。

 

 

 

 

(5) 上野 浩資先生 6550 (T)プッシュプルアンプ(18W

 プログラムでは土屋氏の電流出力型AB級パワーアンプを試聴する予定でしたが、発表会当日の朝に急病のため参加できなくなり、急遽上野先生に6550プッシュプルアンプを出品していただきました。このアンプは初段とドライブ段も差動回路に組まれた3段プッシュプル構成で、ゼネラルトランス製のPMF-171HPというウェスタン巻きのプッシュプル用トランスを使用しているそうです。MJ無線と実験誌12月号に製作記事が掲載される予定なので、詳細はMJ誌をご覧ください。

 

 6550は重い音がするというイメージなので、PMF-171HPを使ってフュージョンやJ-POPなどの軽快な楽曲に合う音色を狙ったそうです。最近参加した八神純子のライブで購入したというCDから「There you are」を演奏しましたが、20歳代の頃のような爽やかな歌声にびっくりしました。歯切れがよく、伸びのある高音域が魅力のアンプです。寺井尚子の「過ぎ去りし日々」での演奏では、分解能が高くとても緻密なジャズバイオリンを堪能しました。

 

 

 

 

(6) 中村 一郎氏 マルチビット方式フルデジタルパワーアンプ(20W

 中村氏のアンプは、716日に開催されたMJオーディオフェスティバルに出品されたマルチビット方式フルデジタルパワーアンプです。市販されている多くのデジタルパワーアンプは1ビット方式のDACを採用しているので、マルチビットDACの音を聴いてみたくて製作したそうです。入力がデジタル信号専用となっているため、アナログ出力への変換が1段で済んでいるのも特長です。操作つまみを囲むようにLED照明が配置されており、正常動作中は青色、スタンバイ状態では紫色、保護回路作動中は赤色に変わります。MJ無線と実験誌20226月号のサイドワインダーに掲載されていますので、詳細はMJ誌をご覧ください。

 

 フルデジタルアンプなので半導体アンプの音色を予想していたのですが、真空管アンプのようなソフトな音色で課題曲を演奏したのが印象的でした。中音域に音の重心があり、八神純子の「みずいろの雨」ではボーカルがとてもリアルに表現されていました。デジタルフィルタの設定を変更できる機能もあるので、デジタルフィルタと音色の関係なども興味のあるところです。

 

 

 

 

2部 協賛企業のデモンストレーション

 前回に引き続き、ゼネラルトランス販売株式会社の木村成之社長より、パワーアンプキット2機種のデモンストレーションをしていただきました。試聴した楽曲は石川さゆりのボーカルや津軽三味線などです。デモンストレーションが終了したとき、会場から大きな拍手が沸き上がったのが印象的でした。回路図等はゼネラルトランス販売様のホームページに公開されていますので、ぜひアクセスしてみてください。

 

6CA7 三極管接続シングルアンプキット(6.7W

三極管接続された6CA7で、オリエントカットコアハイビー材を用いたシングルコアダブルコイルの出力トランスOHC-25WS-2,5Kを駆動する3段構成のアンプです。広帯域で歯切れのよい、現代的なサウンドです。

 

300Bシングルアンプキット (6W)

300Bでオリエントコアを用いたウェスタン巻きのシングル用出力トランスPMF-171Z-3Kを駆動する3段構成のアンプです。デモンストレーションではウェスタン・エレクトリック製の300Bを用いました。中音域に重心があり、ボーカルがステージの前に出てくる落ち着いた音色です。

 

 

  

6CA7 三結シングルアンプ                    300Bシングルアンプ

 

 

3部 講演 「真空管アンプで聴くストリーミングオーディオ (2)」篠義治氏

72回作品発表会に引き続き、真空管アンプを使ってストリーミングオーディオを楽しむための講演と、コストパフォーマンスの良い3機種のDACの比較試聴をしていただきました。講演に用いたパワーアンプは、716日に開催されたMJオーディオフェスティバルに出品されたWE339A無帰還プッシュプルアンプです。なお、DACの比較試聴に関する私の感想は、参考程度に受け取ってください。

 

DAコンバータ3機種の聴き比べ

 ・ifi ZENDAC

普及品のCDプレーヤなどによく使われているテキサス・インスツルメンツ(旧バーブラウン)社製のDACチップDSD1793を使用しており、価格的にも3万円台とサブスクの入門機として最適です。3W程度のアンプでロクハン・フルレンジのスピーカーを駆動する我が家のオーディオシステムであれば、この製品の性能で十分満足できます。

 

 ・SMSL D300

ローム社製のDACチップBD34301EKVを使っており、価格は4万円台とちょっぴり高めです。ZENDACの音色に伸びの良い高音域と力強い低音域が加わってさらに広帯域になったので、この価格差は十分に納得できます。

 

SMSL D400EX

旭化成社製のDACチップAK4499EX2個、AK41911個使用しており、価格も13万円台となっています。楽器の音の滑らかさや奏者の息づかいなどがクリアに伝わり、D300と比較すると明らかに音の分解能が高くなっていると感じました。

 

 

  

コントロール用PC(手前)と、DACおよびプリアンプ()         試聴に用いたWE339Aプッシュプルアンプ

 

 

懇親会

 作品発表会の終了後、会場を久喜駅近くの「徳樹庵」に移して懇親会が開催されました。今回は24名の参加者があり、すき焼きを囲みながらオーディオの話題で盛り上がりました。

次回の第74回新春発表会は、2024年1月21日(日)に春日部駅西口の「やまや新館」で開催される予定です。新春発表会ですので、自作スピーカーの発表となります。

来年もまたオーディオでおおいに盛り上がりましょう。

 

 

 

 

 

 

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