彩球オーディオ倶楽部

67回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初夏の青空に木々の緑が映える518()に、埼玉県久喜市にある久喜総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ倶楽部の第67回作品発表会が開催されました。今回は「銘球50」の聴き比べ(ナス管から新型管まで)というテーマで、戦前を代表する大型出力管として今なお多くのオーディオファンを魅了する50にスポットをあて、聴き比べを行いました。

 

当日は関東近県のみならず、山形県や岐阜県などから200名あまりのオーディオファンが集まりました。

 

 

 

 

 

 

会場の久喜総合文化会館小ホール

 

 

 

 

 

 

 

 

1部 作品発表

 

 

 

 

1部では、5台パワーアンプと24bit PCオーディオシステムが発表されました。アンプの発表では、課題曲を約2分間演奏したあと発表者の作品解説と選曲した音楽を数曲演奏する形式で進められました。またPCオーディオの発表では、16bitでサンプリングした音楽を1曲演奏したあと24bitでサンプリングした音楽を数曲演奏するという形式で進められました。課題曲はモーツワルト作曲のホルン協奏 #1 K-412 (Allegro)です。

 

今回出品されたアンプは三極出力管もしくは多極菅を三極管接続したシングル構成となっており、出力管の個性の違いなども楽しむことができました。本レポートでは出品作品の回路構成についても簡単に説明いたしました。会場で回路図をお買い求めの方は、回路図も合わせて御参照ください。

 

 

 

 

 

 

(1) 菅野 雅宏氏 50シングルアンプ 4.4W モノラル2台構成

 

 

 

 

 1番目は、山形県から参加した菅野氏の50シングルアンプです。初段やドライバ段にも古典直熱三極管を使用しており、まさにこだわりの逸品です。直結回路の採用とB電源の整流に水銀整流管を使用しているため、フィラメント点灯用のA電源でタイマを作動させて、B電源用トランスへの電力供給を1分間遅延させているのが特徴との説明がありました。

 

アンバランス入力を600Ω:50kΩのインプットトランスで受けて初段管の26で電圧増幅し、直結した455kΩ:2.5kΩのインターステージトランスを介して50をパワードライブするという3段構成のアンプです。5026は直流点火、45は交流点火となっています。OPTはゼネラルトランス販売のファインメットコアトランスFM-24WS、水銀整流管は83です。

 

 トランスドライブされた直熱三極管特有の、低音域から高音域までバランスのとれたクールで迫力のある音です。寺村容子トリオの「BLUEでは力強いピアノを、ジャネット・サイデルの歌う「チーク・トゥ・チーク」ではステージの雰囲気をリアルに再現していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 小野 一昭氏 2A3シングルアンプ 4.5W

 

 

 

 

 2番目は小野一昭氏の2A3シングルアンプです。これまでアンプ製作の経験はなかったとのことですが、退職して時間ができたのをきっかけに挑戦し、完成させた作品だそうです。

 

 相互コンダクタンスの高い三極五極管6BL8の五極部を初段に使い、ここで必要なゲインをかせいで三極部のカソードフォロワを介して2A3を励振させています。6BL8の五極部から2A3まで全段直結となっています。またダイオード整流で得たB電源の電流をダンパー用二極管6G-K17を使ってヒーター点灯時間だけ遅延させて供給することで、直結回路の安定性を確保する構造となっています。OPTはタンゴのFW-20SPTはノグチのPMF-170Mを使用しています。

 

菅野氏の50シングルに比べて音の重心が若干低域側にあるため、重低音がとても美しくに感じられます。特に課題曲のホルンが、とても心地よく聴くことができました。またMJQの「べサメ・ムーチョ」では、ステージでライトを浴びているトランペットの輝きまで表現しているようでした。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 中澤 雅生 JJ-300B シングルアンプ 7W

 

 

 

 

 3番目は私が製作したJJ-300Bシングルアンプです。300Bシングルアンプの発表ではWE製を使用した作品が多いのですが、現行生産品で入手が容易なJJ製を使用して作品にまとめてみました。

 

MJ誌の製作記事によく登場する2段構成のシンプルな回路です。初段に電電公社の電話交換機などに使われた五極管CZ-501Dを使って必要なゲインをかせぎ、CR結合で出力管のJJ-300Bを励振しています。出力管のプレートから初段管のカソードに直流を含んだ6dBPK帰還をかけて歪補正を行っているのと、初段管の3.5Vのヒーターを直列接続して6.3Vで点火しているのが特徴です。WE91B型アンプにある出力菅のグリッドフィルタは削除しています。整流管にはダルマ型をしたプスバンの5U4Gを採用し、真空管形状の統一感も出してみました。OPTはタムラのF7002とし、PTもタムラのPC-935を使用しました。8Hのチョークコイルはオリエントコアを使った自作です。

 

 山下達郎や中島みゆきのボーカルを、心地よく再現できたのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 飯野 顕氏 PC Audio 24bitを聴く

 

 

 

 

 4番目は飯野氏の24bit PCオーディオのデモンストレーションです。5年前に自宅のCDプレーヤが故障したため、CDプレーヤによる再生をあきらめ、PCによる音楽再生を研究してきたそうです。LINEアンプの入力を飯野氏の製作したIV(電流・電圧)変換アンプに切り替え、JJ-300Bシングルアンプを使って再生しました。

 

PCに格納された16bitまたは24bitwavファイルの音源をUSBでデジタル・デジタル・コンバータに送り、PCMまたはDSDファイルに変換します。その後さらにデジタル・アナログ・コンバータでアナログ電流信号に変換し、IV変換アンプで電圧信号を生成してLINEアンプに送り出しています。IV変換アンプのほか、PCとコンバータのアナログ電源も自作だそうです。

 

最初1曲が16bit音源、その後は24bit音源による演奏です。バッハのBMW 1035 Adagio を聴き比べてみましたが、24bit再生ではチェンバロを覆っていた薄いベールが剥がされたようなみずみずしさがあり、会場からも「ああ、いいね。」という声が聞こえてきました。また生録音の再生では、CDでは味わえない迫力を体験することができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(5) 小野 伸一氏 GEC KT66(T) シングルアンプ 6W

 

 

 

 

5番目は小野伸一氏のKT66シングルアンプです。出力管のバイアス電圧が調整可能な固定バイアス式なので、6L6族のビーム出力管や五極出力管を差し替えて楽しむことができます。このアンプで自宅のタンノイを心地よく鳴らす出力管を聴き比べて試したところ、KT66に落ち着いたとのこと。普段はクラシックや60年代のポップスなどを楽しんでいるそうです。

 

RCA製の双三極管5691SRPP接続した初段でゲインをかせぎ、三極管接続されたKT66CR結合でドライブするシンプルな構成です。OPT2次側から初段管のカソードに3dBの弱いNFBがかけられています。整流管はムラード製のGZ-34OPTはタンゴのFW-20SPTはノグチのPMC-170Mを使っています。

 

 低音域から高音域までバランスがとれており、特に弦の響きが美しいアンプです。ビバルディの「4つのバイオリンのための協奏曲」と、バッハの「4つのクラブサンのための協奏曲」では、輝くような弦の響きをリアルに再現していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(6) 浜舘 俊一氏 SOVTEK 6550WE(T) シングルアンプ 7W

 

 

 

 

6番目は浜舘氏の6550WEシングルアンプです。35年前に作ったKT88シングルアンプの主要部品を流用し、6550WEシングルアンプに作り替えた作品だそうです。

 

差動増幅回路に組んだ初段の双三極管12AT7と直結された次段の双三極管ECC85(片ユニット)でゲインをかせぎ、CR結合された双三極管5687(片ユニット)によるカソードフォロワで三極管接続された6550WEA2級ドライブする構成です。ドライブ段のカソードから初段差動増幅回路の逆相入力に5.4dBNFBが、また6550WEにはOPT2次側から2.8dBのカソードNFBがかけられています。各段の真空管に印加される正および負電圧は、6550WEのバイアス電圧も含めて、デカップリング回路を兼ねた半導体による定電圧電源回路で安定化されています。OPTはタンゴのFW-20SPTもタンゴのMS-360を使用しています。

 

 歯切れがよく、スピード感のある爽やかな音が特徴です。パーカッションがとれもリアルに響きます。ハイファイセットの「よりそって二人」では、二人の甘い歌声をやさしく表現していました。学生だった頃、夢にあふれていたあの時をつい思い出してしまいました。オフコースの「僕等の時代」や竹内まりあの「告白」など、ボーカルを美しく再現するアンプです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2部 テーマ発表

 

  「銘球 50 の聴き比べ (ナス管から新型管まで)  篠 義治氏

 

 

 

 

2部のテーマ発表は、10種類以上ある篠氏の50コレクションの中から厳選した6種類を聴き比べるコーナーです。501927年にRCAからナス管の250として発表された大型三極出力管で、戦前は多くのメーカーからセカンドソースが販売されていました。篠氏はメーカーと年代によって音色に大きな違いがある50に興味を持ち、コレクションを始めたそうです。

 

試聴する真空管はすべてプリヒートさせておき、すぐにパワーアンプに装着可能な状態でスタンバイさせています。またパワーアンプには、サンオーディオ製のキットSV-TE/50SXを使用しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴した感想を下記に示します。篠氏によると、ボーカルの歌声の艶が球によって違うとのこと。なお、試聴に関するコメントはあくまで私の個人的な感想です。ご了承ください。

 

 

PSVAN 50 (中国)

広帯域で力強さがある。まだエージングが足りないようなので、使い込んで音に柔らかさが出て来るかが興味のあるところ。

 

RCA 50 (アメリカ)

中音域に音の重心がありボーカルの声に艶がある。歌声がやさしく自然で、フランス映画のワンシーンを見ているような気持になった。

 

miniwatt 50 (オランダ)

フィリップスのミニワットシリーズの50で、RCA 50に近いやさしい音色。特にバイオリンの響きが美しい。

 

RCA 250 (アメリカ)

RCA 50と同じようにボーカルに艶がある。ただしエージングが進んだせいか、少しまったりした感じもする。でも、そこがいい味ともいえる。

 

Taylor 50 (アメリカ)

送信管メーカーの50らしくボーカルに力強さがある。フィラメントも太く、電極も堅牢に作られているとのこと。音の感じはPSVANに近い。

 

MAZDA 50 (イギリス)

ボーカルの歌声で、単語が消える間際の余韻がとても美しい。比較試聴したどの球も持っていないMAZDAだけの特徴。

 

 

 

 

 

 

 

50について解説する篠氏と、試聴に用いたサンオーディオ製アンプ SV-TE/50SX

アンプの右側で待機しているのは、プリヒート中の50

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会 

 

 

 

 

無事に作品発表会も終了し、会場を「天然温泉 森のせせらぎ なごみ」に移して懇親会の始まりです。まるで温泉旅館の宴会場のようですね。それもそのはず。今日の懇親会の会費には、天然温泉の入浴料も含まれています。

 

昔懐かしい社員旅行の宴会のような雰囲気で、会員どうしの親睦を深めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回の第68回作品発表会は、112日(土)に久喜総合文化会館小ホールで開催されます。またオーディオでおおいに盛り上がりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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