彩球オーディオ倶楽部

66回新春発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暖かな日差しに恵まれた22()に、埼玉県幸手市にある幸手市コミュニティセンターにて、彩球オーディオ倶楽部の第66回新春発表会が開催されました。当倶楽部では年に3回作品発表会を開催していますが、新春発表会はスピーカーシステムが中心となります。今回は「自作小型(20cm以下)スピーカーシステムあれこれ」というテーマで、4名の力作が発表されました。

 

また、テーマ発表として

 

 

 

・樫村幸三会長による「JBL LE-8T研究」

・小澤隆久先生による小型スピーカーシステム設計に関する講演

・関口英雄先生による「JAZZ四方山話4

 

 

 

など、オーディオに関する見識を広げるような楽しい企画もたくさん用意されました。

 

 

 

 

 

 

会場の幸手市コミュニティセンター

 

 

 

 

 

 

新春発表会は小型スピーカーシステムの発表のため小規模な会場での開催となりますが、関東近県から会場の定員いっぱい110名のオーディオファンが集まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1部 会員4名による自作スピーカーシステムの発表

 

 

 

 

いつものように、一人25分の持ち時間の中でテーマ曲を約2分間演奏し、その後発表者が作品の解説と自ら選んだ曲を数曲演奏するというスタイルで進められました。発表作品は事前に別室で小澤先生によって1mのニアフィールド音圧特性とインピーダンス特性が測定され、発表時に計測したデータがステージ上のスクリーンに投影されました。

 

なお、今回のテーマ曲は、Emilie-Claire Barlow Live in Tokyo より「All I Do Is Dream Of You」です。  

 

 

 

 

 

 

(1) 上条雄二氏 オートトランス入力密閉型20cmフルレンジシステム

 

 

 

 

超三結方式で有名なお兄様の制作した、トランスリニアバイアス回路のアンプの特性を十分に引き出すように設計された密閉型のシステムです。エンクロージャの背面に設置されたオートトランスを使って低インピーダンス化されているのが特徴で、電流供給を高め、かつ反射がおこらないようにするための工夫だそうです。ユニットはフォステクスのFE208EΣの改良型です。

 

計測した音圧レベルは約92dBで、5020kHzまでほぼフラットです。サラオレインの「ネッラ・ファンタジア」と平原綾香の「愛は死なず」では、美しい歌声をのびのびと再現していました。「Comin' Home Baby」の心地よいベースの響きも魅力です。

 

 

 

 

 

 

  

右側の写真は専用のパワーアンプ

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 鈴木康夫氏 フルレンジ3Wayスピーカーシステム

 

 

 

 

フルレンジユニットを3個組み合わせ、ネットワークからアッテネータを排除したシステムです。クロス周波数はウーファとスコーカ―のセンター周波数領域を使うように、200Hz2kHzに設定し、ツイータは5μFのコンデンサで低域をカットしているだけだそうです。低音を強調するためウーファのバスレフポートにフェルトを入れていますが、スコーカ―のバスレフポートにもフェルトを入れてウファーとの共振を抑制しています。ユニットとエンクロージャはフォステクス製です。

 

計測した音圧レベルは約90dBで、6020kHzまでほぼフラットです。ホリー・コールの「アイ・キャン・シー・クリア・ナウ」では口径20cmのウーファとは思えない歯切れがよく力強い低音とクリアなピアノの響きを披露しました。またサイモンとガーファンクルの歌う「アメリカ」では生々しいアコースティックギターを再現していました。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 樫村幸三会長 小型バックロード+タンデム型システム

 

 

 

 

妙高オーディオ倶楽部のイベントに出品した作品で、ハイが上向きに1発、ミッドが前面に4発と背面に1発、ローがタンデム駆動のウーファで2発という片チャンネルあたり8発の力作です。ミッド部分はバックロードにもなっています。上向きについたツイータは、ふた状の板で前方向に音を反射させる構造です。

 

測定した音圧レベルは約90dBで、10020kHzまでほぼフラットです。中音域を重視する樫村会長のシステムだけあって、ボーカルがとてもリアルです。JANET SEIDELの「You belong to me」では甘い歌声を、テネシー・アーニー・フォードの「しずけき祈り」では、ステージから降りて観客席の前で歌っているような生々しい臨場感を披露してくれました。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 栗田茂氏 テーパー型共鳴管とFc720ホーンによる2ウェイシステム

 

 

 

 

低域用に下向き斜めに配置された共鳴管(ユニットはフォステクスFE208EΣ)と、高域用のカバ合板から削り出したウッドホーン(ドライバはフォステクスD1405)を、クロス周波数1.2kHzのネットワークで結合した2ウェイシステムです。共鳴管の出口を70%に絞り、共振周波数である50Hz付近の音圧レベルの盛り上がりを抑えているそうです。また、箱鳴りを抑えるため大型ホーンを作成したときにでた三角形の端材をエンクロージャに張り付けていますが、これがとってもポップなアクセントになっています。「高能率で、大音量でも音が崩れない」がスピーカーシステム製作のポリシーだそうです。

 

計測した音圧レベルは高域が上昇する特性で、50200Hz付近が約90dB20020kHz付近が100dB程度あります。Brian Brombergの「Caravan」では口径20cmとは思えない歯切れがよく心地よいベースを、また井筒香奈江の「いっそセレナーデ」では心にしみるようなチェロの響きをみごとに再現していました。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

2部 テーマ発表

 

 

 

 

(1) JBL LE-8T 研究:シングルおよびツインドライブ聴き比べ  樫村幸三会長

 

 

 

 

白いコーン紙で有名なJBLLE-8Tは、小型スピーカーの代表的なユニットとして現在でも多くのファンを魅了していますが、今回は@単発、A単発+ツイータ、Bツイン、Cツイン+ツイータで音の違いを楽しみました。また、経年劣化で可動部が傷んだユニットを柿渋紙のコーンと鹿革エッジで修復(ボイスコイルも巻直し)したユニットの再生音も聴いてみました。比較試聴したときの私の個人的な感想を下記に示します。

なお、今回用いたLE-8Tはアルニコマグネットを使用しています。

 

 

 

 

@ 8Ωの単発

  低域から高域までバランスがとれており聴きやすい。

  口径20cmとは思えない豊かな低音が魅力。

A 8Ωの単発+ツイータ(0.22μFで低域カット)

  高域がシャープになり、ピアノのタッチが鋭くなった。

  ドラムスのシンバルも明瞭に聞こえるが、好みの分かれるところ。

B ツイン(16Ωユニットの並列接続)

  奥行感は薄れたが、柔らかでしっとりした感じの音。

  単発に比べて低域から中域に力強さが加わった。

C ツイン(16Ωユニットの並列接続)+ツイータ(0.22μFで低域カット)

  ツイータによる補正が効果的にきいて、力強さにワイドレンジが加わった。

D 柿渋紙コーンのスピーカー

  ボイスコイルを含め振動系が全く別物。

音の重心が高域に寄って、全体的に乾いた感じの音。

E 柿渋紙コーンのスピーカー+ツイータ(0.22μFで低域カット)

  高域が強い感じがする。

 

 

 

 

 

 

使用したLE-8Tシステム。

左から、8Ω単発、16Ω並列接続ツイン、柿渋紙と鹿革エッジのスピーカー

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) SPユニットの特性とエンクロージャ形式選定について  小澤隆久先生

 

 

 

 

新春発表会の恒例となった、小澤先生による小型スピーカーシステムの設計に関する講演と新作新の試聴コーナーです。前半はこれまでMJ誌に131回(11年間)にわたって連載された製作記事をまとめた資料をベースに、スピーカーシステムを設計するために理解しておく必要がある知識について解説していただきました。

 

 特に印象に残ったのは、

 

 

 

100200Hzが中高域と同じ音圧レベルならば、古典楽曲が十分聴ける。

80Hzまでフラットにできると、ほとんどのオーケストラの曲が聴ける。

40Hzまでフラットにできると、グランカッサ(大太鼓)が使われている楽曲も楽しめる。

 

 

 

 

という話題です。

 

自作したスピーカーシステムでどんな音楽を楽しむのか、目的をはっきりさせるための参考になりました。また、先生お勧めのスピーカーユニットとして、フォステクスやマークオーディオの製品紹介もありました。

 

後半はMJ3月号に掲載予定のスピーカーシステムの試聴をおこないました。口径20cmのユニットを用いたバックロードホーンで、中高域から50Hzまで音圧レベルが95dBでフラットになっているそうです。ムソルグスキーの「展覧会の絵」では、会場いっぱいにグランカッサのダイナミックな響きを披露していました。スピーカーシステムの製作過程や材料などはMJ誌をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) Jazz 四方山話4  関口英雄先生

 

 

 

 

テーマ発表最後は、関口先生のJazz四方山話です。今回は「ちょっとややこしいモノラルとステレオの関係」というテーマで、1957年から1960年代にかけての、モノラル盤とステレオ盤のLPが並行発売されていた時期について解説していただきました。同じタイトルでありながらモノラル盤とステレオ盤で録音した年や録音場所が異なっていたり、ジャケットにSTEROと記載されていながら実はモノラルLPであったりと、今から思うとだいぶおおらかな時代であったようです。

 

ステレオのほうがモノラルより音が良いに違いないと思っている音楽ファンと、付加価値の高いステレオ盤を高い価格で販売したいレコード会社が、成熟しきっていないステレオ録音技術に右往左往させられている様子が、当時のLPレコードを再生しながら興味深く語られました。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

テーマ発表では、当倶楽部会員の西堀氏製作のEL156UL接続)プッシュプルアンプ(出力60Wモノラル構成2台構成)が使用されました。また、Jazz四方山話のレコード再生では樫村会長製作のJENSEN A-12励磁型スピーカーを用いた2ウェイシステムが使用されました。

 

 

 

 

 

 

  

EL156プッシュプルアンプ                JENSEN 励磁型スピーカーシステム

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会(新年会)

 

 

 

作品発表会も無事に終了し、会場を久喜駅近くの徳樹庵に移して懇親会(新年会)の始まりです。今回も約40名の仲間が集まり、アツアツの鍋を囲んで、楽しい会話が弾みました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おや、こちらのテーブルでは徳利の隙間に回路図を広げて、なにやら新作アンプの相談をしているグループがいますね。回路方式や部品の選定方法など、懇親会では情報交換も行われます。きっと数年後には発表作品となって、ステージの上で拍手と喝采を浴びることでしょう。

 

彩球オーディオ倶楽部では、広くオーディオファンの作品を求めています。ぜひ作品発表会にお越しいただき、アンケートシートの下段にある作品エントリー欄で発表作品をエントリーしてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、次回の第67回作品発表会は、518日(土)に埼玉県久喜市の久喜総合文化会館小ホールでの開催予定です。またオーディオでおおいに盛り上がりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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