彩球オーディオ倶楽部

64回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心配した雨も明け方にはあがり、天候も持ち直して爽やかな週末となった519()、埼玉県久喜市にある久喜総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ倶楽部の第64回作品発表会が開催されました。当日は関東近県、および北陸などから、180名あまりのオーディオファンが集まりました。

 

 

 

 

 

 

会場の久喜総合文化会館

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように、今回の発表会も3部構成となりました。

 

1部は「アルテックA5で聴く自作真空管アンプ」というテーマで、5名の作品が発表されました。発表会に用いたA5システムは、当会会員が若かりし頃、当時日本にあったアルテックの代理店から購入したオリジナル品です。

 

続いて第2部では、三須雄二氏がウェスタンエレクトリック社の部品を使って作成したWE132B型ラインアンプとWE-124型パワーアンプを使い、「ALTEC A5」と「WE系アンプ」のコラボを楽しむというテーマで、A5が活躍していた時代を再現してみました。

 

 第3部のLPタイムでは、三須氏が製作したCR-NF型イコライザアンプと、高久悦男氏が製作したマランツ#7型イコライザアンプの比較試聴を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1部 会員製作アンプの発表

 

(1) 6B4G シングルアンプ 3.5W 嶋田和弥氏

 

 

 

 

最初の作品は嶋田氏の6B4Gシングルアンプです。限られた予算の中でもOPTにこだわり、8畳間のリスニングルームで十分な音量が得られるアンプを目指したそうです。

 

初段の五極管12SJ7でゲインをかせぎ、CR結合された6B4Gをドライブするという二段構成のアンプです。OPTにはTANGO製のU-808を用い、無帰還の構成となっています。B電源はTOYODEN製のトランスで240Vに昇圧し、シリコンダイオードによるブリッジ整流回路で得ています。また6B4GのフィラメントはTOEI製のヒータートランスを用いた直流点火、12SJ7は交流点火となっています。

 

A5は音圧レベルが115dBもあるので、3.5Wでも十分な音量で音楽を楽しむことができます。特にテーマ曲のドボルザーク作曲の新世界では、みずみずしいバイオリンの響きと力強いティンパニーといった6B4Gアンプの特徴が十分でていると感じました。嶋田氏は普段LPレコードでクラッシックや演歌を楽しまれているそうですが、このアンプはクラシックの演奏に向いていると思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 6V6G プッシュプルアンプ 10W 菱田好秀氏

 

 

 

 

2番目の作品は菱田氏の6V6プッシュプルアンプです。定年を迎え、「独身時代に購入していたOPTPTを使ってアンプを製作してみたい」とオーディオ仲間に相談したところ、サポートを得ることができ、アンプ完成までこぎつけることができたそうです。

 

初段に三極管接続した5693を用い、6SN7によるムラード型位相反転回路でAB1級動作の6V6Gをドライブする三段構成のアンプです。OPTLUX製のCOH35-6PTも同じくLUX製の8A54で、OPTの二次側から初段管のカソードに5.6dBの負帰還がかけられています。4本の6V6Gは固定バイアスとなっており、単独にバイアス電圧が設定できるようになっています。整流管は5AR4を用いています。

 

ビーム管特有の歯切れのよい音色で、ティンパニーからバイオリンまでとても自然に表現していました。Grace Mahyaのルート66ではボーカルを元気に表現し、「やっぱりアルテックにはジャズが似合うなあ」と聞き惚れてしまいました。菱田氏は自宅ではJBLのトールボーイタイプのスピーカーを使っているそうですが、相性がぴったりではと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) KT88(T) プッシュプルアンプ 20W 福嶋猛夫氏

 

 

 

 

3番目の作品は、欅の木目が美しい福嶋氏のKT88プッシュプルアンプです。大工という職業柄木から離れがたく、キツツキのように楽しく穴をあけながらアンプを製作したそうです。シャーシのひびやゆがみを防ぐため、半年ごとに蜜蝋を塗ってメンテナンスしているとのこと。すでにこのアンプは、楽器の領域に入っているようです。

 

初段に12AU7SRPPを使い、同じく12AU7のムラード型位相反転回路を用いて三極管接続されたKT88をドライブする三段構成のアンプです。OPTにはHASHIMOTO製のHW-60-5を用いており、二次側から初段管のカソードに6.5dBの負帰還がかけられています。B電源はシリコンダイオードによる両波整流となっています。

 

低音の歯切れがよく、またダイナミックレンジも広く、A5をよく制御しています。アッカー・ビルグの「白い渚のブルース」ではクラリネットを情感たっぷりに演奏し、ニニ・ロッソの「夜空のトランペット」では爽やかなトランペットの音色を披露していました。山口百恵の「いい日旅立ち」も忘れることができません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 6CA7(UL) プッシュプルアンプ 50W 小池知雄氏

 

 

 

 

 4番目の作品は小池氏の6CA7プッシュプルアンプです。出力の大きなアンプを作ってみたいと思い、モノラルアンプ2台構成の6CA7プッシュプルにしたそうです。シャーシの板金加工と塗装は専門業者に依頼したので、美しいアンプに仕上がりました。

 

 初段が12AT7の差動増幅回路となっており、ドライバに12AT7を使ったダブルプッシュプルを駆動しています。OPTTANGO製のFW-50-5PTも同じくTANGO製のST350を使っています。B電源はシリコンダイオードを用いたブリッジ整流回路となっており、6CA7の固定バイアスの電圧は単独に調整が可能です。

 

 分解能が高く、重低音から高音までとても自然に表現しています。位相特性もよく、ちあきなおみの「朝が来る前に」では、ステージの雰囲気を生々しく再現していました。また「インザムード」では、個々の楽器を明確に聞き分けることができ、ステージいっぱいにビッグバンドの世界が広がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(5) EL156 (UL) プッシュプルアンプ 60W 西堀正一氏

 

 

 

 

1部の最後は、モノラル2台で構成された西堀氏のEL156プッシュプルアンプです。西堀氏にとっては2台目のEL156アンプだそうで、1台目はTAMURA製、2台目はTANGO製のトランスで製作したそうです。製作から10年以上たっているため、電解コンデンサは新しいものに交換されています。

 

初段にテレフンケン製ECC82、次段に東芝製12BH7Ahi-sを用いた差動入力直結2段増幅後、GE製の12BH7Aを用いたカソードホロワを介してテレフンケン製のEL156をドライブしています。EL156は固定バイアスとなっており、個別にバイアス電圧の調整が可能です。B電源はシリコンダイオードによる倍電圧整流、ただし初段管はトランジスタによるドロッパ型定電圧電源回路で安定化が図られています。OPTTANGO製のFC120-5PTTANGO製のMS-350です。

 

 重低音から高音までバランスが良く、オーケストラがとても自然で、ホールの雰囲気がよく再現されています。音の切れもよく、A5を完全に制御していると感じました。ボーカルが実際のステージのように生々しく再現されていたのには驚きましたが、特にAnn Burtonの「Lover Come Back To Me」の力強いピアノは圧巻でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2部 テーマ発表

 

ALTEC A5」と「WE系アンプ」のコラボを楽しむ 三須雄二氏

 

 

 

 

お楽しみのテーマ発表は、A5システムとウェスタンエレクトリックの回路を再現したアンプを使って、当時の雰囲気を味わってみようという企画です。試聴に用いたWE132B型ラインアンプは、純正のライントランスWE160Cと同等管を用いて製作されており、電源部も300Bをレギュレータに用いたWE20型となっています。また、WE124型パワーアンプもWE350のほかにOPTとチョークコイルが純正品となっています。

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

課題曲のドボルザーク作曲「新世界」を聴いてびっくりしたのは、オーケストラがとても自然で、大きなホールの雰囲気がよく再現されていたことです。低域から高域までバランスもよく、特に歯切れの良い重低音はとても心地よく感じました。もちろん、ジャズ演奏での力強いピアノや、アコースティックギターの心にしみるような弦の響きは、ホールでの使用を目的としたアルテックの真骨頂といったところです。

 

 

 

 

 

 

WE124型パワーアンプ

 

 

 

 

 

 

 

 

3部 LPタイム

 

「自作CR-NFタイプとマランツ#7タイプ」EQアンプの聴き比べ 三須雄二氏

 

 

 

 

LPレコードの再生では、イコライザアンプや昇圧トランスの特性がオーディオシステムの個性に大きな影響を与えるといわれています。そこで今回のLPタイムでは、CR-NF型とマランツ#7型のイコライザアンプを切り替えながら試聴し、システムの個性がどのように変わるか比較してみました。

 

三須氏が製作したCR-NF型イコライザアンプは、初段がパラレル接続された双三極管E82CCによるCR型ロールオフ回路、次段が双三極管62402段に用いたNF型ターンオーバー回路となっています。また、高久氏が製作したマランツ#7型イコライザアンプは、双三極管ECC83による3段構成となっており、回路定数も原機の値が用いられています。

 

さて試聴した結果ですが、この2台のイコライザアンプには、明らかに音楽表現の違いがありました。ただ、この違いを文章で表現するのはとても難しく、かつ印象には私の主観が入っています。参考程度に受け取ってください。

 

まずCR-NF型イコライザですが、LPレコードに録音された音を細部まで正確に描き出そうとしているように感じました。例えるならば、繊細なタッチの細密画、はたまた芸術写真といったところです。

それに対してマランツ#7型イコライザアンプは、アーティストの感性や演奏に対する情熱を伝えようとする力強さを感じました。例えるならば、印象派の絵画といったところでしょうか。試聴の終わりにどちらが好みかを会場の参加者に挙手で尋ねたところ、ほぼ拮抗していたのも興味があるところです。

 

 

 

 

 

 

  

WE132B型ラインアンプ               試聴に用いたイコライザアンプ

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会

 

 

 

 

無事に作品発表会を終え、場所を久喜駅近くの「徳樹庵」に移して懇親会の始まりです。今回は約35名の仲間が集まりました。樫村会長の挨拶に始まり、3名の新会員の紹介、そして乾杯と続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいしいモツ鍋をつつきながら、自慢のシステムやローカルに開かれる試聴会の日程調整など、テーブルのあちこちでオーディオ談義に花が咲いていました。定年になって時間に余裕ができたとのことで、計画中のアンプについて真空管やトランスの配置、また回路方式など、ベテラン会員と相談している人もいました。

 

 

 

 

 

 

テーブルの隙間では、試聴会の打ち合わせをしているグループもありました。

 

 

 

 

 

 

次回の第65回作品発表会は、109日(土)に久喜総合文化会館での開催となります。また楽しい企画を準備しておりますので、ぜひご参加ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system