彩球オーディオ倶楽部

61回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木々の緑に初夏のような日差しがまぶしい520()に、埼玉県久喜市の久喜総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ倶楽部の第61回作品発表会が開催されました。今回は倶楽部発足20周年の記念大会でもあり、会場には250名を越えるオーディオファンが集まりました。

 

今回は「発足20年を迎えて 新たなる出発」というテーマで、第1部がベテラン会員6名の作品発表、第2部がジャズシンガーの瀬戸カオリさんを迎えてのビッグバンドによる生演奏というイベントとなりました。

 

 

 

 

 

 

会場の久喜総合文化会館

 

 

 

 

 

 

 

 

1部 会員6名による自作アンプの発表

 

 

 

 

いつもの発表会では新会員を優先するのですが、今回はベテラン会員の作品からシングルアンプ3台、プッシュプルアンプ3台が出品されました。試聴に用いたスピーカーは樫村会長入魂の大型励磁型ユニットを用いた4ウェイシステムです。各会員とも持ち時間25分で、最初に課題曲を2分程度演奏し、解説を交えながら持参したレコードやCDを演奏するという形式で進められました。課題曲はRosemary Clooneyの「The Day of Wine and Roses」で、LPレコードを用いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(1) 上野浩資氏 14GW8シングル 3W モノラル2台構成

 

 

 

 

三極五極管14GW8を用いた、コンパクトな単管シングルアンプです。MJ201611月号に掲載された作品をベースにし、出力段に改造が加えられています。

 

会場で回路図をお買い求めの方は、お手元の回路をご覧ください。上野氏のアンプは、一見すると標準的な2段構成アンプのように見えますが、ベテランらしい工夫が随所に盛り込まれた楽しい回路となっています。まず帰還回路ですが、出力部のカソードに出力トランスの4Ω端子を使って6.8dBのローカル帰還をかけています。初段にも5.8dBの電流帰還がかけられています。また、ブリッジダイオードのマイナス端子に向かうリターン電流を使って-7.5Vをつくり、出力管の固定バイアスとしています。14Vのヒーター電圧は6.3Vを倍電圧整流して得ており、直流点火となっています。

 

出力3Wですが、十分な音量で大型スピーカーシステムを駆動していました。特に、力強く歯切れのよいピアノと軽快なベースで、秋吉敏子の「Count your Blessings」を心地よく演奏していたのが印象的です。USA for AFRICAの「We are the World」の高らかな合唱もいい感じでした。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 樫村幸三会長 WE339A シングル 8W モノラル2台構成

 

 

 

 

当初300Bシングルアンプとして製作したのですが、28年の月日が流れるうちに、WE339Aシングルアンプへと進化していった「樫村会長のオーディオ遍歴」のようなアンプです。出力管のWE339Aも、今となっては幻の真空管となってしまいました。

 

初段は三極管接続された6SJ7、ドライバ段も三極管接続されたWE349Aで、タムラ製の段間トランスB5004を使って三極管接続されたWE339Aを励振しています。回路図にはWE349Aのグリッドリークが抜けていますので、WE349AのコントロールグリッドとGNDの間に470kΩの抵抗器を書き加えてください。負帰還は段間トランスの2次側から初段の6SJ7のカソードに39kΩの抵抗器を介してかけられたローカル帰還のみで、出力段のWE339Aには帰還がかけられていません。出力トランスは当会の会員である沼口氏の自作だそうです。整流管は比較的内部抵抗の高い、高圧整流管5R4をつかっています。

 

トランスドライブ特有の、音楽のいちばん美味しい中音域が充実した音で、ローズマリー・クルーニや青江美奈の歌声を魅力的に表現しました。三極管接続なのでWE300Bと同じような傾向の音かなと思っていたのですが、明るく華やかな感じです。圧倒的な迫力で演奏したアイーダも印象的でした。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 竹村厚治氏 GM70 シングルアンプ 20W

 

 

 

 

友人に最高のアンプを作ってほしいと依頼され設計したアンプで、今回持参したものは発表会用に旧タンゴトランスを集めて製作したそうです。

 

初段管が12AX7Aの高信頼管であるムラード製CV4004、ドライバ管がWE300B、出力管が板プレートのGM-70と、高性能な部品を贅沢に使用しています。20061011月のMJ誌に掲載された佐藤進氏の回路をベースに、全段自己バイアス化、DF改善のための少量のNFB追加といった変更が加えられています。ドライバ管と出力管はCR結合されており、GM-70のグリッドリークは100kΩです。

 

重厚な低音域と力強い中音域が特徴で、ボーカルを美しく表現するアンプです。矢沢永吉の「灯台」では、まるでステージで歌っているかのごとく、リアルに表現していました。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の迫力のある演奏も、忘れることができません。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 上田順筰氏 6528A プッシュプルアンプ12W

 

 

 

 

シリーズレギュレータ用双三極管6528Aを使った、完全差動三段構成のアンプです。カソードに接続された定電流ダイオードで160mAの電流を設定し、プッシュプル接続された6528Aが、それを分け合いながら完全A級動作するのが特徴です。定電流動作なので、出力段が電源回路に影響されないというメリットがあります。初段管の5692の差動電流は2mA、ドライバ管の5692の差動電流は5mAです。周波数特性は10Hzから100kHzまでフラット、歪率は1W0.1%、ダンピングファクタは約8、ノイズレベルは43μVだそうです。

 

三極管アンプ特有の優しい音色で、ローズマリー・クルーニーやグラシエラ・スサーナの歌声を披露してくれました。とにかく位相特性がすばらしく、96kHz24bitのハイレゾ録音された「組曲惑星」の演奏では、オーケストラの楽器が目に浮かぶようにステージに並びました。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(5) 鈴木康夫氏 ER300B プッシュプルアンプ 20W

 

 

 

 

ドイツ製の300BであるER300Bを使用したアンプで、重量24kgの巨大な出力トランスを駆動しています。このトランスは50Hz2.5kWという定格で、1Hzからほぼフラットな特性となっているそうです。アンプの回路図は公開されていませんが、差動に組んだ初段の12AT7で増幅と位相反転を行い、ダブルプッシュプルに組んだ12BH7ER300B5kΩの出力トランスを駆動しています。

 

低域から高域までクリアなワイドレンジアンプです。特に、歯切れのよい低音と明るい高音が魅力です。矢沢永吉の「答えの扉」と美空ひばりの「人生一路」では、この特長がよく出ていました。5Hzまで入っているという噂の重低音CDMez Ga」では、音楽を体で感じてしまいました。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(6) 横山潤一氏 813(T) プッシュプルアンプ 100W モノラル2台構成

 

 

 

 

送信管813はプレート損失125W、プレート損失22Wの大型管で、シルバニア、RCAJRC、東芝と多くのメーカーから販売されました。今日は東芝製813の大出力アンプと効能率スピーカーの組み合わせです。分厚い欅のブロックをくり貫いたシャーシも、高級感たっぷりです。乾燥するとひびがはいるので、定期的にワックスを塗るなど「楽器のように手入れすることも大切」とのことでした。

 

五極管接続された高信頼管5693で初段増幅を行い、6B4Gをドライバに使って段間トランスを駆動しています。出力段の813は三極管結合されたプッシュプルで、プレート電圧が約1000V、固定バイアスの電圧が約-100Vとなっています。813のプレート電圧と、初段およびドライバ段は別電源となっており、813のバイアスはドライバ側の電源回路で負電圧をつくり供給しています。真空管のフィラメント、ヒーターはすべて直流点火です。

 

低域から高域までフラットで、高電圧駆動された送信管特有の爽やかな音色が特長のアンプです。位相特性も抜群で、ステージ上のオーケストラの雰囲気がとてもよく再現されていました。バッハの「目覚めよと呼ぶ声あり」では、ホールならではの重低音が堪能できました。また組曲「グランドキャニオン」では、実際の雷鳴とオーケストラのコラボレーションを映画のように楽しむことができました。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

2部 ビッグバンドによるジャズ生演奏

 

 

 

いよいよお楽しみのジャズ生演奏の時間です。今回はプロのジャズシンガー瀬戸カオリさんの歌声と、第50回記念イベントでお世話になった総勢18名からなるビッグバンド「ドリーム・スィング・キングダム」の華麗な演奏をたっぷり1時間堪能することができました。

 

彩球オーディオ倶楽部のイベントとして特別のはからいで、PAには横山氏の813プッシュプルアンプを用いました。また、PAなしで生の楽器の音だけで演奏を楽しむといった企画もありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              

[準備時間での1コマ]

LPレコードのRosemary Clooneyと共演するバンドマスター。

楽器を自在に操れる人は、こういう楽しみ方もできるのですね

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会

 

 

 

 

無事に発表会も終了し、会場をいつものレストラン・ヴィラージュに移して懇親会の始まりです。今回は新しい会員が10名増え、懇親会の参加者も約50名となりました。

美味しいお酒と料理を味わい、一息ついたところでジャズの生演奏の始まりです。瀬戸カオリさんと、ドリーム・スィング・キングダムの選抜メンバーの演奏を、たっぷり特等席で堪能することができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回は第62回作品発表会となります。1028()に、久喜総合文化会館でお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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