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彩球オーディオ倶楽部 第59回作品発表会 |
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街路樹が赤や黄色に色づく季節となった10月29日(土)、埼玉県久喜市にある久喜総合文化会館小ホールにて、「アナログから新型真空管Nutubeまで」というテーマで、第59回作品発表会が開催されました。 今回も会員5名の作品発表のほか、電子楽器メーカーとして知られるコルグ様が発表した新型真空管Nutubeを使ったアンプのデモンストレーションや、ノイマン製のヴィンテージカートリッジを使ったLPレコードの試聴など、彩球オーディオ倶楽部ならではの多彩な企画となりました。会場の定員は300名なのですが、関東のみならず北陸や関西などから、200名を越えるオーディオファンが集まりました。 |
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会場となった久喜総合文化会館 |
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第1部 会員の作品発表 |
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一人25分の持ち時間の中で2分ほど共通のテーマ曲を演奏し、作品の解説と発表者が選んだ曲を数曲演奏するというスタイルで進められました。テーマ曲はHalie Lorenが歌う「On the sunny
side of the street」です。 発表作品の回路構成について簡単な説明も記載しましたので、会場で回路図集をお買い求めの方はそちらも参照してください。 |
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(1) 6L6GC(T)プッシュプルアンプ 10W 小池知雄氏 |
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小池氏の作品はモノラル2台構成のパワーアンプです。以前に自作したモノラルアンプの部品を一新し、2台制作してステレオ化したそうです。 14dBのオーバーオール帰還をかけたウィリアムソン型アンプで、中μ双三極管6SN7で直結2段増幅後、同じく6SN7によるPK分割型位相反転回路を介して、三極管接続された6L6GCをドライブしています。OPTはハシモトのHW-40-10を使用しています。整流回路はダイオードによる両波整流で、PTはノグチのPCM-170Mを使用しています。平滑回路のチョークコイルは2段構成になっており、5Hのチョークを介して出力段に電力を供給し、さらに30Hのチョークを通してドライブ段に電力供給しています。 ビーム管特有の低音部に力強さのあるサウンドで、テーマ曲のヘリー・ロレンが歌う「On the sunny
side of the street」を演奏しました。またセルジオメンデス・ブラジル77の「フール・オンザ・ヒル」では、ライブの臨場感たっぷりに演奏を表現してくれました。 |
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(2) 2A3プッシュプルアンプ 10W 福嶋猛夫氏 |
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2番目は福井県から参加された福嶋氏の2A3プッシュプルアンプです。モノラルの2台構成で、今回も厚いケヤキのブロックをくり貫き、角を面取り加工した美しいシャーシで登場です。 中μ双三極管6SN7を使った2段増幅で、2A3をトランスドライブしています。2A3は直流点火されており、自己バイアスの電圧は60Vです。トランスドライブ方式なのでオーバーオール帰還はかけられていませんが、6SN7の2段目のプレートから1段目のカソードに、コンデンサでDC成分をカットした6dBのローカルPK帰還がかけられているのが特徴です。 2A3らしい上品でクリアなサウンドで、懐かしいザ・ピーナッツの「可愛い花」がステージいっぱいに広がりました。定位もしっかりとれており、五木ひろしの「道」をリアルに表現しました。ザ・ベンチャーズの「ダイヤモンド・ヘッド」の迫力ある演奏も忘れることができません。 |
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(3) 6GB8(T)プッシュプルアンプ 20W 鈴木康夫氏 |
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鈴木氏の作品もモノラル2台の構成です。何度か発表会にファインメットトランスを使ったアンプを出品されていますが、今回の作品もオールファインメットトランスで構成された夢のようなアンプです。 初段に中μ双三極管12AU7の片側を使い、直線性に優れた垂直偏向三極出力管9R-A6を2本使ったムラード型位相反転回路で受け、三極管接続された6GB8をドライブしています。6GB8は固定バイアスとなっており、球の特性に合わせて電圧が個別に調整できるようになっています。また、初段と直結された位相反転段の出力が最適になるように、9R-A6の負荷抵抗も念入りに調整されています。設計と調整にかなりの時間と手間をかけている様子がうかがえます。 究極のムラード型アンプとあって、高電圧をかけた送信管アンプのような透明でスピード感のあるサウンドです。楽器の音を正直に表現するアンプでもあり、心にしみこむようなリアルなピアノにはびっくりしました。エディ・ゴメスとスティーブ・ガッドの「Mez-Ga」には、通常CDではカットされる20Hz以下の音成分も入っているらしいとのことで演奏しましたが、ステージの前に出てくるリアルなドラムに、録音もさることながらアンプの「ただものではない凄さ」を感じました。 |
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(4) GE838シングルアンプ 18W 竹村厚治氏 |
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4番目は大阪府から参加された武村氏のダイナミックカップルド方式を使ったGE838シングルアンプです。真空管はすべて落とし込み、パネルもシルク印刷されておりメーカー製アンプのような仕上がりです。煌々と輝くトリタンフィラメントも素敵です。 中μ双三極管12AU7で構成された2段増幅回路で入力を受け、三極管接続された6CA7とGE838で構成された出力部を励振しています。電源投入時にGE838のプレート電流の供給にタイムラグをとるため、ダイオード整流のあとさらに整流管を通して供給しています。また、12AU7と6CA7のプレート電流はFETを用いたドロッパ式電源で供給されています。GE838のフィラメント点火にもスイッチング電源が用いられており、残留ノイズを0.01mVまで追い込んでいるそうです。 送信管特有の爽やかなサウンドです。力強さも感じられるのは、グリッドを励振している6CA7の個性でしょうか。特にボーカルの美しさが印象的で、テーマ曲を歌うヘリー・ロレンや、「スカイラーク」を歌うリンダ・ロンシュタットを甘く魅力的に表現しました。臨場感あふれる矢沢永吉の「パッシングライト」も、いい味を出していました。 |
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(4) CD-34改(Non Over Sampling)Ver.9
CDプレーヤ 村西朗氏 |
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最後の作品は大阪府の村西氏による改造CDプレーヤです。ベースになっているプレーヤは1985年に日本マランツがベルギーから輸入して販売したCD-34で、自分の好みの音にするため31年かけて改造したそうです。DACなどの基本構成は変更していませんが、アナログフィルタ、OPアンプやコンデンサ等の部品の交換、配線パターンの短縮化が図られています。試聴には武村氏のGE838シングルアンプを用いました。 初期のCDプレーヤの音にありがちな硬さがなく、かなりアナログ的な音という印象です。テーマ曲のヘリー・ロレンのボーカルがとても優しく、柔らかに聞こえました。「パッシングライト」を歌う矢沢永吉の声も、爽やかな印象です。ベン・ウエブスターの「ダニーボーイ」の太いテナーサックスもなかなか魅力的でした。 |
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ところで、今回の発表会から登場したのが、レベルメーターです。背面にマイクロフォンが内蔵されており、メーターに表示される音圧レベルもキャリブレーションされています。発表会では調整卓付近で90〜95dBとなるように音量調整されました。 |
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第2部 Nutubeを使ったパワーアンプの試聴 |
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第2部はコルグ社様の新型真空管を使ったパワーアンプのデモンストレーションです。電子楽器のトップメーカーとして知られるコルグ社は、シンセサイザーやギターアンプに多くの真空管を使っています。その製品開発の過程で、省電力低電圧で作動する真空管が開発できないか検討されたそうです。日本で円筒形の真空管を作りたかったそうですが、生産設備がすべて廃却されていたため自社生産は断念し、蛍光表示管をベースにした三極管の生産をノリタケ伊勢電子に委託して実現できそうです。 Nutube 6P1は双三極管構造で、消費電力は12mWと12AX7のわずか2%、アノード電圧は5〜80Vで動作します。直線性にも優れ、半導体アンプに真空管特有の心地よい音色を付加することができるそうです。 試聴に用いたパワーアンプは、ドライブ段にNutubeを用いた D級100Wの出力部を持つハイブリッドアンプです。 |
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ホールに展示されていたNutube Nututeを2個使用した試作パワーアンプ |
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今回のデモンストレーションでは、PCに記録された音源をAudio Gate-4 でUSBを経由してDS-DAC-10R(1bit DAC) に送り、アナログ信号に変換して試作パワーアンプを作動させるという構成です。D級アンプであるにもかかわらず、ドライブ段にNutubeを使っているため柔らかな音質になったような気がします。特に電子楽器を使うポップスや歌謡曲の演奏には相性がよく、新しい素子として期待できると感じました。 |
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プロジェクタで投影されたAudio
Gate-4の画面 DS-DAC-10R |
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第3部 テーマ発表 |
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今回のテーマ発表は2件です。吉田副会長の研究発表である「三極管と多極菅の再生音について」と、ノイマンDSTカートリッジを用いた「アナログ再生の楽しみ」です。 |
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(1) 三極管と多極管(ビーム管)の再生音について |
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巷では良い音がするという直熱型三極管に人気が集中し、傍熱型多極菅は負帰還をかけないと使えないと言われているが、はたしてその通りなのか実際に試聴して試してみようという企画です。 試聴に用いたアンプは、高μ双三極管6SL7で構成されたSRPPの初段で出力管をドライブするというシンプルな回路です。出力管は6L6GCと6B4Gがスイッチで切り替えられるようになっており、同じくスイッチで無帰還と9.2dBのオーバーオール帰還も選択できるようになっています。無帰還の6B4Gシングルアンプと、9.2dBのオーバーオール帰還がかけられた6L6GCシングルアンプのダンピングファクタは、ともに2.2だそうです。出力管と負帰還を切り替えるとアンプのゲインも変わるため、入力レベルもスイッチ操作で切れ替えて、出力される電力が同じになるよう考慮されています。 出力管を6B4Gと6L6GCに切り替え、かつ6L6GCでは負帰還のある/なしでジャズとクラシックを聴き比べてみました。正直なところ、初めは6B4Gと6L6GCの違いがわかったのですが、聴いているうちにだんだん差がわからなくなってしまいました。 きちんと設計・製作されたアンプであれば、高能率のスピーカーを使う範囲では、球の違いや負帰還の有無はあまり大きな差にならないということでしょうか。 |
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6B4G/6L6GC切り替えアンプ アンプの出力管切り替えスイッチ |
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(2) アナログ再生の楽しみ |
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恒例のLPレコードを使ったアナログオーディオの時間です。今回はラッカー盤の検聴用に開発されたプロ用MCカートリッジであるノイマンDSTを使用しました。このカートリッジの針圧は6.5gでダンパーがありません。ダンパーの代わりにレコードの溝の弾性を利用してトレースしていきます。 第58回の作品発表会でEMTのカートリッジの試聴を行いましたが、その繊細な音とは対照的にノイマンはとても力強い音色です。使用したアンプも1960年代の名機McIntosh
MC240とあって、3曲の試聴があっという間に終わってしまいました。 |
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EMT-T890 MCトランス 試聴に用いたMcIntosh
MC240 |
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懇親会 |
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発表会も無事終了し、会場をいつものレストラン・ヴィラージュに移して懇親会の始まりです。今回は新会員のうち4名の方が、懇親会に参加していただきました。美味しい料理とお酒に舌鼓を打ちながら、オーディオ談義に花が咲さいたところで、恒例のジャズの生演奏です。バンドの前のお気に入りの席で演奏に聴き入る人や、ローカルに開催される試聴会の日程を話し合うグループなど、夜がふけるまで会場は華やかな雰囲気につつまれました。 |
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乾杯の合図で懇親会の始まりです。 4名の方が新しい仲間に加わりました |
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次回の発表会は、2017年1月21日(土)の第60回新年会となります。会場は幸手コミュニティセンター(最寄り駅はJR宇都宮線の東鷲宮駅)です。小型スピーカーをメインに、楽しいイベントを企画しております。またオーディオでおおいに盛り上がりましょう。 |
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キーボードにはエックスセブン(12AX7)が輝いていました |
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