彩球オーディオ倶楽部

 

58回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初夏のような日差しがまぶしい2016514()に、埼玉県久喜市にある久喜総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ倶楽部の第58回発表会が開催されました。熊本地震復興チャリティバザールも開催され、関東近県を中心に約200名のオーディオファンが集まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も3部構成による盛りだくさんの内容です。第1部が会員5名による作品発表、第2部が関口英雄先生によるジャズに関する講演、第3部が整流方式の違いによる再生音の違いの試聴と、EMT製の新旧カートリッジによるLP演奏でした。

 

 出品作品の回路について簡単な説明を加えてみましたので、会場で回路図を購入された方は、こちらも合わせてご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

久喜総合文化会館

 

 

 

 

 

 

 

 

1部 作品発表

 

(1) 篠義治氏 STC4033 シングルアンプ 4W

 

 

 

 

 

柳沢先生の「真空管アンプで音楽を聴く会」で、素直なきれいな音と形が気に入り製作したそうです。STC4033はドーム型の外周器の中に電極が斜めに配置された、不思議な真空管です。

 

高μ双三極管6SL7-GTで構成されたSRPPのドライバ1段でSTC4033を励振しています。出力トランスはタムラ製F-913を使っており、4Ω端子を8Ωとして使うことで、1次側のインピーダンスを7kΩとしています。OPTの二次側からドライバ段のカソードへのオーバーオール帰還と、STC4033のカソードへの軽いローカル帰還がかけられています。整流管は5AR4、パワートランスもタムラ製PC-935を使っています。

 

課題曲はナットキンコールとナタリーコールのデュエット「アンフォーゲッタブル」ですが、柔らかく素直なヨーロッパサウンドで、甘く情感豊かに表現しました。無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調でも、美しい弦の響きにうっとりしてしまいました。瀬戸カオリさんの歌う「花は咲く」では定位がしっかりとれており、ステージを奥行き感たっぷりに再現しました。会場には瀬戸さんご本人もいらしており、華やいだ雰囲気になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 照内篤氏 808 シングルアンプ 8W

 

 

 

 

 

30年ほど前に35TGを入手し宍戸アンプを作成して聴いていたのですが、フィラメントが切れてしまったため出力管を808に改造したそうです。クリーム色にトランスが塗装された、総重量39kgのヘビー級アンプです。

 

 初段の中μ双三極管12AT7によるSRPPでゲインをかせぎ、次段の三極管接続された6L6-GCで橋本製の段間トランスA-105を駆動して808を励振しています。出力トランスはタムラ製F-2013を使い、1次側のインピーダンスを5kΩとするため、二次側の16Ω端子を8Ωとして使っています。整流回路はダイオードブリッジで、808のプレートには5kΩの抵抗器と5R4-GBで構成されたスロースタート回路が挿入されています。808は固定バイアス式で、+30Vのバイアスが三端子レギュレータLM-317Tで与えられています。

 

送信管特有の帯域が広くさわやかなサウンドが印象的です。ニューヨーク・トリオの「ラブユー、マッドリー」では、スピード感のある音でピアノとベースを表現しました。青春時代によく聞いたという荒井由美の「翳りゆく部屋」では、ゆったりとLPを使った高品質な演奏を披露してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 浅岡参三氏 GE6550A(T) シングルアンプ 12W 

 

 

 

 

 

初めて製作したアンプですが、仲間の協力を得て設計から2か月で完成させたそうです。最大出力や周波数特性なども、設計段階で設定した目標をクリアすることができました。

 

 高μ三極管6SL7のドライバ1段でゲインをかせぎ、三極管接続された6550を励振させるというシンプルな構成です。出力トランスにはノグチ製のPMF-30WS-2.5kを使い、二次側からドライバ管のカソードに1dBの軽いオーバーオール帰還がかけられています。回路図ではダイオードブリッジによる両波整流となっていますが、実機には5U4-GBも実装されていました。

 

浅岡氏のアンプも定位がしっかりとれており、ステージの雰囲気を生々しく再現します。特に低音の響きがすばらしく、力強いベースが印象的でした。当会の発表会ではめずらしくマーチ「ボギー大佐」の演奏がありましたが、ステージいっぱいに豪快な金管楽器の世界が広がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 上野浩資氏 GE6550A(UL) シングルアンプ 15W

 

 

 

 

 

60年も前に開発された6550Aの実力が知りたくて、その力を最大限に引き出すアンプを製作したそうです。

 

バランス入力をシャープカットオフ五極管6AH6による差動増幅回路で受け、6550Aをドライブする2段構成のアンプです。出力トランスの4Ω端子をGNDに落とし、0Ω端子と16Ω端子から差動増幅回路の各コントロールグリッドに13.1dBの負帰還をかけています。6550Aのスクリーングリッドには、ULとビーム管接続が選択できるスイッチが取り付けてあります。MJ20167月号に詳しい製作記事が掲載されていますので、こちらもご覧ください。

 

ビーム管特有の歯切れがよく力強い音のアンプです。東京佼成ウィンドオーケストラの演奏する「African Symphony」では、大編成のオーケストラがステージ上にみごとに再現されました。高らかに鳴り響くホルンがとても印象的です。また、竹内まりやの「告白」では、まりやの歌声と歯切れのよいパーカッションがクールに表現されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(5) 高久悦男氏 6CA7 プッシュプルアンプ 35W

 

 

 

 

 

基本回路は管球王国誌に掲載された大西先生のKT-88プッシュプルアンプですが、使用している真空管とフィードバック回路を変更したそうです。

 

 初段は中μ双三極管12AU7で構成したSRPP、その出力を12AU7で構成したムラード型位相反転回路で受け、UL接続された6CA7を駆動しています。6CA7は固定バイアス方式で、バイアス電圧は-33Vに設定されています。出力トランスはISO製のFX-40-5を採用しており、2次側から初段管のカソードに8.5dBのオーバーオール帰還がかけられています。パワートランスもISO製のMX-280を使用しており、整流回路はダイオードによる両波整流です。

 

 低域から高域までバランスがよく、35Wのハイパワーとあいまって演奏に余裕が感じられます。特にドラムスやピアノのような瞬発力を要する楽器の表現にその実力が発揮されていました。ブルーベック・カルテックの「テイク・ファイブ」は録音も抜群で、その実力がいかんなく発揮されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2部 関口英雄先生による「Jazz四方山話」

 

 

 

 

 

2部は、伊奈町にある埼玉県民活動センターで9年間にわたって「ジャズの聴き方楽しみ方」講座の講師を務めておられる関口先生による講演です。100年の歴史を持つジャズの魅力について、コレクションされているLPレコードを演奏しながら解説していただきました。

 

今回の講演は大きく二つのエピソードから構成されていました。前半はジャズが最も輝いていた1935年から約7年間のスイングジャズの時代。後半はアメリカのジャズを追いかけていた日本が、日本人の感性で演奏を始めた1950年から1970年についてです。先生のコレクションはどれも録音がすばらしく、かつレコードの保存状態がいいので、まるで生演奏を聴いているようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3部 お楽しみコーナー

 

(1) 整流方式の違いによる再生音について

   

 

 

 

 

 第3部は作品発表会恒例の「お楽しみコーナー」です。前半は整流素子を簡単に変えることができるように改造したパワーアンプ(2A3-40シングルアンプ)を用いて、整流方式が音楽表現にどのように影響を与えるか試聴しました。整流素子のインピーダンスが異なるため、素子を替えるとB電圧も変わってしまいます。そこで、スライダックでB電圧を350Vに調整できる機能が電源回路についています。

 

 試聴に使った整流素子は下記の4種類です。

  ・シリコンダイオード(15円程度)

  ・水銀整流管 83

  ・出川式第2世代電源モジュール

  ・WE-274A

 

 試聴に使った曲はジャズとクラシックです。詳しくは演奏曲目リストをご覧ください。

 

 私の個人的な感想ですが、15円のシリコンダイオードの音を基準に表現すると、水銀整流管83では音の質感がソフトになり、かつ低域から高域にかけて全体的に帯域が広がったように感じました。出川式電源モジュールでは、さらにステージの奥行きが感じられるようになりました。音の質感はハードになり、半導体の特徴がでています。WE-274Aも帯域が広くステージの奥行きも感じられますが、音の質感はソフトになり、弦の響きがとても心地よく感じられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    2A3-40シングルアンプの整流菅を外し、B電圧を外部電源で供給しています。

外部電源回路はB電圧用トランス、整流素子用ソケット、B電圧監視用メーター、

スライダックで構成されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) アナログ再生の楽しみ

 

 

 

 

 「お楽しみコーナー」の後半は新旧EMT製カートリッジを使ったレコードの試聴です。今回使用したカートリッジは、第38回発表会の「カートリッジ聴き比べ」で好評だったXSD-15と、新設計されたJSD5です。MCトランスもEMTの純正品のT-890を使用しています。アンプは整流素子にWE-274Aを用いた2A3-40シングルです。

 

 私の個人的な感想ですが、XSD-15は低域から高域までバランスが良く、とても繊細な音に感じました。

JSD5はさらに繊細な音という紹介でしたが、私には音の重心が少し低域側に移り、ソフトでかつ力強い音に感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

XSD-15(アーム装着)とJSD5(ホルダ装着)       MCトランスT-890

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリティバザール

 

 

 

 

 

 ロビーでは熊本地震の義援金を募るため、チャリティバザールが開催されました。下記の協賛企業や個人をはじめ、多くの会員の皆さんからオーディオ部品や募金が寄せられました。

 

 ・(株)サン・オーディオ 様

 ・(株)誠文堂新光社(MJ)様

 ・(株)ゼネラル産業 様

 ・(株)トライオード 様

 ・ 浅香寿朗 様

 ・ 岩村保雄 様

 ・ 佐藤進 様

 ・ 征矢進 様

 ・ 武石章 様

 ・ 武村厚治 様

 ・ 鶴田浩一 様

 ・ 松並希活 様

 ・ 柳沢正史 様        [あいうえお順]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会

 

 

 

 

 

 無事作品発表会も終了し、会場をいつものレストランヴィラージュに移して懇親会の始まりです。今回も約50名の参加者が集まりました。3名の新たな仲間の紹介と乾杯のあいさつ、そして美味しい料理とワインを囲んで楽しい時間の始まりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も前半と後半で1時間づつ、アマチュアジャズバンド「アトランダム」による生演奏がありました。ボーカルを務める中島さよりさんは、第52回発表会の懇親会以来の久しぶりの登場です。軽快で力強い歌声を、たっぷり堪能することができました。彼女は最近「My Life with You」というタイトルのCDをリリースされたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回の第59回作品発表会は、1029日(土)に開催される予定です。また、ここ久喜総合文化会館小ホールでお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system