彩球オーディオ倶楽部

55回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2015516()に、埼玉県久喜市の久喜総合文化会館小ホールにて、彩球オーディオ倶楽部の第55回作品発表会が開催されました。当日は午前中に小雨がぱらつくあいにくの天候でしたが、日本中から200人を超えるオーディオファンが集まりました。最近はご夫婦で参加されるファンも多くなってきたようです。

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

今回も第1部が6名の方の作品発表、第2部が協賛企業の製品紹介、第3部が録音エンジニア・音楽プロデューサとして世界的に活躍中の行方洋一氏による講演と、盛りだくさんの内容となりました。そこでいつもより15分繰り上げ、12:15からの開始となりました。

 

樫村会長の開会のあいさつのあと、司会の手塚賢司氏によるプログラムと使用機器の簡単な説明があり、発表会が始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

第1部 作品発表

 

 

 

 

1部は会員自作のアンプの発表です。いつものように25分の持ち時間で共通課題曲を3分程度演奏したあと、トークを交えながら自ら選んだ音楽を演奏するというスタイルで進めました。今回の共通課題曲は三宅由佳莉の歌う「Let It Go」です。

 

 

 

 

 

(1) 田村 氏 G807 バランス入力型無帰還プッシュプルA1アンプ 5W

 

 

 

 

20年以上前にオークションで落札した6L6プッシュプルアンプをベースにしていますが、ロシア製6L6属の球であるG807を使用するため、設計からやり直したそうです。部品も1940年代のWE製配線材や吟味したカップリングコンデンサなど、音質にこだわったものを採用しています。

 

初段の6FQ7の差動増幅回路でバランス入力を受け、直結された6FQ7のカソードホロワを介して三極管接続されたG807を駆動しています。整流回路はシリコンカーバイト製ショットキーダイオードによる倍電圧整流です。

 

中音域が充実しており、ボーカルが前に出て来るアンプです。観客を柔らかく包み込むように、三宅由佳莉が歌う「Let It Go」を演奏しました。白鳥英美子の「Amazing Grace」にもうっとり聴き入ってしまいました。

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 長島 俊一 氏 300B シングルアンプ 8W

 

 

 

 

サンオーディオのキットSV-300BEがベースですが、電解コンデンサをフィルムに、出力管のバイアス抵抗をメタルクラッドに交換するなどの改良が加えられています。自宅では、小澤先生のQWT型スピーカをこのアンプに接続して楽しんでいるそうです。

 

シンプルな回路構成のアンプです。6SN7の直結2段増幅のあと0.22μFのカップリングコンデンサを介して自己バイアスのプスバン300Bを無帰還で駆動しています。300Bシングルアンプ特有の広帯域で爽やかな音色が特長です。

 

手嶌葵の「テルーの唄」では、とてもナチュラルなボーカルが印象的でした。また、ブランデンブルグ協奏曲第5番第1楽章では、コントラバスからチェンバロまで広帯域性をいかんなく発揮していました。持ち時間がなくなり、チェンバロのカデンツァの前でフェードアウトしたのがとても残念です。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 篠 義治 氏 808 シングルアンプ 11W

 

 

 

 

MJ誌に発表された柳沢先生のアンプを試聴し、とても気に入り製作したそうです。スイッチで出力管のバイアスと直流点火用フィラメント電圧を切り替えることができ、811A812Aにも対応が可能です。

 

五極管接続の6SJ7で三極管接続されたEL34のカソードチョークドライブ回路を励振し、808を駆動する構成です。RCA製の808にはゲッターのあるタイプとないタイプがあるそうですが、使用しているのはゲッターのないタイプです。

 

送信管特有の力強く、そして明るく透明感のある音色です。Clark Terryの「C-Jam Blues」では、ステージいっぱいにビッグバンドの楽団が広がりました。また松尾明の「Besame Mucho」では、ピアノとベースを力強く表現しました。Halie Lorenの妖艶で大人の魅力たっぷりな歌声も忘れることができません。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(4)井上 克己 氏 811A シングルアンプ 10W

 

 

 

 

811A、シャシ、OPTを仲間に譲ってもらい製作したそうです。テレビの垂直偏向発振・出力に使われていた18GV8の三極部で初段増幅し、五極部を三極管接続のカソードホロワにして811A2級で駆動しています。このカソードホロワ段は、+/−両電源となっています。また、OPTの二次側から初段管のカソードに、オーバーオール帰還がかけられています。

 

課題曲の「Let It Go」では、やさしく柔らかな声で三宅由香莉の歌を演奏しました。オスカーピーターソンの「A列車で行こう」では、抜群の定位の良さでステージの上にビッグバンドを表現しました。鮫島有美子、五輪真弓、ちあきなおみのボーカルでは、あたかもステージに歌手がいるようなリアルさに驚きました。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

休憩時間に裏蓋を開けてアンプの内部を見せていただきました。L型抵抗器とチューブラー型コンデンサが、まるで真空管全盛期のカラーテレビのように立体的に整然と配置されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(5) 桑沢 豊和 氏 6V6-GT プッシュプルアンプ 10W

 

 

 

 

20代の頃からMJ誌やラジオ技術誌を参考にアンプを自作されていたそうですが、数年前にラックス38アンプの修理を引き受けた際、その音の良さに魅了されて設計・製作したアンプだそうです。

 

6AW8の高μ三極部を初段に使い、6350のムラード型位相反転回路で6V6GTを駆動しています。初段と位相反転段を直結するため、6350のカソード電圧を6GW8の五極部でレベルシフトさせています。OPTの二次側から初段管のカソードにオーバーオール帰還をかけていますが、6V6GTを固定バイアスにしてカソード帰還をローカルにかけています。

 

中音域が充実した聴き疲れのしない音色です。当会の発表では珍しくハードロック中心の選曲でしたが、聖飢魔Uの「The End of the Century」やLED ZEPPERINの「天国への階段」を、歯切れがよくパンチのきいたビーム管サウンドで表現しました。ロックと真空管アンプは、とても相性がいいと思います。またショパンのバラード第1番ト短調作品23では、力強いピアノを披露しました。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

(6) 上野 浩資 氏 14GW8 プッシュプルアンプ 11W

 

 

 

 

最後の作品は上野氏の14GW8プッシュプルアンプです。2013年のMJ1月号に掲載された平衡伝送方式の音がとても良かったので、MT4本の省エネアンプで実現したそうです。半導体アンプのような外観で、ケースの製作にも多くの時間が費やされているそうです。

 

平衡伝送された入力を14GW8の三極部で構成した差動増幅回路で受け、1μFのカップリングコンデンサを介して五極部のプッシュプル出力段を駆動しています。出力段にはOPTの二次側からローカルにカソード帰還がかけられていますが、差動増幅回路の正相と逆相入力にもOPTの二次側から帰還がかけられています。

 

音楽の中心となる中音域が充実したアンプで、長時間聴いていても聴き疲れしない音色です。ピアノの繊細なタッチもみごとに表現されており、中村由利子の「Pastoral」では、おもわずうっとりと聴き入ってしまいました。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

第2部 協賛企業の講演・デモンストレーション

    「フルレンジ接続による38cmウーハーの再生能力を試聴する」

 

 

 

 

2部はSMT社の励磁型ウーファW38Lについて、同社の大山雅春氏に解説をしていただきました。また、A7型のキャビネットにW38LJBL-075を組み込んだ2ウェイシステムを使用して試聴も行いました。W38Lは励磁電圧が調整可能で、5V(9,300ガウス)でクラシック、8V13,000ガウス)〜10V15,680ガウス)でジャズというように、ジャンルと好みにあわせて設定ができるそうです。

 

励磁電源が逆起電力を吸収してくれるので、励磁型スピーカは立ち上がりのよいスピード感のある音色が特徴です。W38Lも、歯切れがよく透明感のある音色でクラシックやジャズを演奏しました。

 

 

 

 

 

 

      

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3部 行方洋一氏の講演

 

 

 

 

3部では著名な音楽プロデューサ、録音エンジニアである行方洋一氏をお招きし、録音テクニックや録音現場の裏話など、音楽ソースの演奏を交えて体験談を語っていただきました。

(講演内容がプログラムと違っておりました。お詫びいたします。)

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

前半は録音歴50年の人生を振り返り1940年代から現代に至るまでの録音テクニックやレコード制作に関する体験談を、後半は生録音のテクニックについて、貴重な音源を交えながらユーモアたっぷりに苦労話を披露していただきました。

 

特にヒットソングを連発した東芝EMI時代のレコーディングの裏話や、製作に携わったドラマのテーマ曲やコマーシャルソング、ゲームミュージックなどの誕生秘話などは圧巻でした。

 

1時間の講演時間ではとても語りつくせない内容でした。アンケートにもぜひ続きを聞きたいという声が多数あがっていましたので、またこのような機会があることを楽しみに待ちたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会

 

 

 

無事に作品発表会も終了し、会場をいつものレストラン・ヴィラージュに移して、お楽しみの懇親会が始まりました。今回も50名ほどの参加者があり、とても盛り上がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味しい料理を食べ、お酒もまわったところで、いよいよジャズの生演奏の始まりです。部屋の後ろでゆったり聴く人、自宅のシステムのリスニングポジションに近い位置で聴く人、バンドのすぐ横でメンバーになった気分で聴く人、参加者はそれぞれ自分のお気に入りの場所で2時間ほどのライブを堪能しました。

 

今回ライブ演奏を行ったジャズバンド「アトランダム」は、武里にあるサニーサイド(Tel:048-733-7307)で毎月第四土曜日20:00から演奏を行っているそうです。アットホームな雰囲気でジャズを楽しみたい方は、こちらのお店も訪ねてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回の第56回作品発表会は1031()に久喜総合文化会館小ホールで開催される予定です。またオーディオでおおいに盛り上がりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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