彩球オーディオ倶楽部

54回作品発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2015214()に、埼玉県春日部市にある「やまや新館」にて、彩球オーディオ倶楽部の新春発表会が開催されました。当日は3月中旬の陽気となり、80人ほどの熱心なオーディオファンが集まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当倶楽部は年に3回作品発表会を開催していますが、新春発表会は規模の小さな会場を使って小型システムの発表を行っています。今回は4部構成で、個性豊かなスピーカーやカートリッジが発表されました。

 

 樫村会長による開会のあいさつのあと、2015年の執行役員を担当する三須氏、奈良氏、手塚氏の紹介がありました。この三名によって、今回の新春発表会を含めた2015年の作品発表会が企画されます。

 

 

 

 

 

 

左から2015年の執行役員に選ばれた三須氏、奈良氏、手塚氏。

 

 

 

 

 

1部 励磁型小型スピーカーと3Dシステムの試聴

 

 

 

 

 歯切れがよくクリアなサウンドが評価され、近年励磁型スピーカーの人気が高まってきました。そこで、第1部ではローヤル産業製の2ウェイシステムと会員自作の16cmユニットを使用したフルレンジシステムを試聴しました。

 

 ローヤル産業のスピーカーは、口径5cmのツイータRF050117cmのウーファRF1701を用いたとてもコンパクトな2ウェイシステムです。高域から低域までバランスがよく、爽やかなサウンドが特徴です。特に弦楽器の表現がすばらしく、励磁型スピーカーならではのクオリティの高い音と感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の作品は、当倶楽部の会員である加藤氏と沼口氏、そして妙高オーディオクラブの佐藤氏の三人によるフルレンジスピーカーシステムです。構想から5年、思考錯誤と失敗を繰り返しながら、ようやく完成させた口径16cmのオリジナルユニットを使用しています。励磁型スピーカーによく使われる軟鉄よりも保磁力が小さく、かつ透磁率が高いトランス用コア材を磁気回路に使っているため、とても歯切れのよい音を実現しています。

 

励磁電源はコアの透磁率が最も高くなる磁束密度8000ガウスを保つように設計されており、電源のインピーダンスを低くしてボイスコイルに発生する逆起電力を吸収する効果を持たせました。そのため、半導体アンプに比べてダンピングファクタが小さい真空管アンプでも、コーン紙の制動がきいた爽やかなサウンドが得られます。

 

 

 

 

 

 

左から沼口氏と加藤氏。オリジナルユニットのコーン紙は佐藤氏による柿渋紙。

 

 

 

 

 

 

キャビネットの背面からスピーカーユニットを見せていただきました。ブックシェルフ型キャビネットを前後逆にし、背面側に穴をあけてユニットを取り付けています。かつてウーファだった穴から吸音材をめくると、パワートランスのような巨大なオリエントコア製の磁気回路が姿を現しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイヤトーンP-610と比較試聴を行いましたが、P-610の中音域に厚みのある柔らかな音色に対して、自作励磁型スピーカーは帯域が広くスピード感のある音に感じました。励磁型スピーカーは、若い人が好むロックやポップスにも合うかもしれません。

 

 

 

 第1部の最後は、P-610と口径38cmのウーファを使った3Dシステムを試聴です。ウーファーはカット周波数80Hzのフィルタを介したあと、左右チャンネルをミックスしてモノーラル駆動されています。

 

樫村会長による3Dシステムの解説のあと、ウーファをON/OFFして低音増強の効果を確認しました。個人的な感想ですが、低音を付加するとボーカルの声が滑らかになって聞こえるようです。またオーケストラでは、音に厚みが増してスケールの大きな音になりました。

 

 

 

 

 

 

台に乗っているのがP-610フルレンジシステム、樫村会長の右側が38cmのウーファです。

比較試聴ではウーファがONになると「3D ◎」という札が掲げられました。

 

 

 

 

 

 

 

 

2部 バリレラ・カートリッジ入門編

 

 

 

 

 バリアブル・リラクタンス型カートリッジ(通称バリレラ・カートリッジ)は、SPレコードの再生用として1945年にゼネラル・エレクトリック(GE)社で開発されました。現在ではこのタイプのカートリッジは生産されていませんが、中音域が豊かで力強い音色はジャズファンを中心に支持者が多いようです。第2部では、会員のコレクションの中からRPX-052というGE製バリレラ・カートリッジを使い、ジャズとクラシックの表現の違いをDENONDL-102と比較しました。バリレラ・カートリッジを使ったシステムでは専用のイコライザを使用しますが、今回はUPX-003Aという当時のGE製オリジナルを使用しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再生帯域が広く現代のオーディオといった感じのDL-102に比べ、RPX-052は音楽の美味しいところがぎっしりつまった中域中心の音色です。演奏した曲が195060年代のモノーラル録音のレコードなので、バリレラ・カートリッジには有利だったのかもしれません。目を閉じて聴いていると、当時のアメリカの光景が瞼の裏に蘇ってくるようでした。

 

 

 

 

 

 

                                 

UPX-003Aは双三極管6SC7を使った単球のバリレラ専用イコライザです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3部 DDBK方式による小型スピーカーの低音増強法

 

 

 

 

 第3部は、MJ誌でおなじみの小澤先生による小型スピーカーシステムの製作ノウハウを紹介した講演です。先生が名付けたDDBK方式というスピーカーシステムの紹介を中心に、小型システムでの低音増強についてお話していただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DDBK方式は片チャンネルあたり2本のスピーカーを使うシステムです。1本は標準バスレフ型、もう1本を低音増強用ケルトン型にし、これらを並列接続にして使います。ダクトから出てくる低音の音圧と位相を合わせるため、2本のスピーカーユニットは同じものを使います。ケルトン型のキャビネットはダクトのあるスピーカー背面側の寸法をバスレフ型キャビネットと同じにとり、密閉部となる正面側を1.52倍とするのがポイントだそうです。使用するスピーカーの標準バスレフ寸法が入手できれば、簡単にケルトン型のキャビネットが設計できる訳です。

 

 

 

 

 

 

フルレンジスピーカーの台のように見えるのがケルトン部です。

 

 

 

 

 

 

 講演ではフォステクスのFE103「ソロ」という口径10cmのユニットを使ったDDBKシステムを試聴しました。MJ無線と実験誌の201412月号で発表されたシステムですが、雑誌に掲載されたシステムを試聴できるのも作品発表会の醍醐味です。

 

 ベースとドラムスのデモ演奏を使って効果を確認した後、クラシックやジャズも試聴しました。小さなキャビネットから信じられないような豊かな低音が出てきたのには驚きです。低音を増強する機構がシンプルなので、高域と中域のバランスもよくとれています。バスレフ部とケルトン部から出てくる低音の位相が合っているので、低音にドロドロした「もたつき感」がありません。812畳のリスニングルームで使うには、もってこいのシステムだと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

4部 エッジレススピーカシステムの試聴

 

 

 

 

 第4部は樫村会長が自作したシステムの試聴です。かつて一世を風靡したフォステクス製のエッジレススピーカーユニットをウーファーに用いた3ウェイシステムで、スコーカにはパイオニア製のユニット、ツィータはデンマークのスキャンピークを使用しています。キャビネット内部に定在波が発生しにくいように、ウーファ部からツィータ部にかけて絞りこんだような台形をしています。

 

 試聴の途中でカートリッジの結線が外れるトラブルがありましたが、アルビノーニのオーボエ協奏曲では個性的な古楽器を表情豊かに表現しました。また、カンターデドミノでは、帯域の広いパイプオルガンをダイナミックに再現していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懇親会

 

 

 

 

 予定どおり16:30に発表会が終了し、会場のレイアウトを変更して17:00から懇親会が開催されました。新たに5名の仲間も加わり、懇親会の参加者も40名を越えました。都合で発表会には参加できず、懇親会だけ参加した会員もいたようです。

 

 樫村会長のあいさつのあと全員での乾杯、そして美味しい料理とお酒を楽しみました。会場のあちこちに、新しいシステムや今年の計画について談笑する会員の輪ができていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回の第55回作品発表会は、いつもの久喜総合文化会館小ホールにて516日(土)に開催されます。次回も彩球オーディオ倶楽部ならではの楽しいイベントが企画されているようです。またオーディオでおおいに盛り上がりましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

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