「ジャズの聴き方楽しみ方Z」

「LPレコード鑑賞会」試聴会レポート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成27920日、104日、1018日、111日の各日曜日4回にわたり、埼玉県県民活動総合センターにおいて、「ジャズの聴き方楽しみ方 Z 講座」が開催されました。最終日の111日(日)には、同センター内の小ホールにおいて「LPレコード鑑賞会〜魅惑のジャズ・サウンド(6)」と銘打って、LPレコードコンサートが開催されました。

 このLPレコード鑑賞会について、彩球オーディオ倶楽部がハード面で全面的に協賛、支援致しましたのでご報告申し上げます

 

 

 

 

 

 

  

「ジャズの聴き方楽しみ方7」広報紙   「魅惑のジャズサウンド」テキスト表紙

 

 

 

 

 

 

 

 

 このジャズ講座の特色は何といっても、地元深谷市在住の関口英雄先生の若々しく、情熱あふれる講義内容ではないかと思います。先生は小学生の時以来、60有余年にわたってジャズを聴き続け、ジャズを心の友として歩んでこられた方です。

 

 講義に使用されるテキストは各回のテーマ(先生の永年に亘るジャズ研究によって、良く吟味思考され、分類されたテーマ)毎に、数曲選曲されているのですが、その曲目、演奏者の紹介が種々のエピソードを交え懇切丁寧に分かり易く掲載されており、レコードのジャケットも綺麗に印刷されており、ジャズのなんたるかを、楽しく学ぶことが出来るものです。

 

本講座の1回目から3回目の講義の中から、印象に残っている先生の名講義を23挙げてみます。

 

 

 

 

 

 

関口先生の講義風景

 

 

 

 

 

 

 

 

(1)「バスクラ2年」について

 

 

 

 

今回の講座の「part-1」では、「ジャズのトリヴィア、こんな楽器を使ったジャズもある」が取り上げられました。あまりジャズ演奏楽器としてはポピュラーではない楽器(パイプオルガン、チェレスタ、チェンバロ、フレンチホルン、Cメロディサックス、等)が紹介され、最後に取り上げられたのが「バスクラリネット」でした。これらの珍しい楽器によるジャズを聴いていますと、あらためて、ジャズの奥深さを知ることが出来、感激でした。

バスクラリネットの魅力に惹かれた、凝り性の先生は、密かに2年間、バスクラリネットジャズの発掘研究に没頭されたのでした。

 

音源発掘は1920年代から2010年代まで約100年間にもおよび、試聴調査された演奏家は、ジェリー・ロール・モートン、ハリー・カーネイ、ハービー・マン、エリック・ドルフィー、デヴィッド・マレー、ジョン・サーマン、マーカス・ミラー、ジョン・ギルモアー、ペニー・モーピン、ボブ・ミンツァー、ヨリス・ルーロス等のマルチリード奏者でした。

 

先生が紹介された曲目の中では、ジェリー・ロール・モートンの「サムデイ・スイートハート」とヨリス・ルーロスの「デイ・ドリーム」が印象的でした。前者は1926年の古い録音ですが、バスクラの重低音のソロは魅力的で、この楽器の魅力と可能性に注目して、ジャズの創生期に、最初に、この楽器を採用したモートンの功績は大ですね。後者は2010年の新しい録音で、フランス生まれのオランダ人ルーロスの26才時の演奏です。木管楽器特有のやわかで艶やかな高音部と重低音部の品のあるコラボレーション演奏は、この楽器の将来への可能性を十分に示していると言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

(2)「ユニゾンハミング」について

 

 

 

 

講座の「part-2」では、「ジャズのトレヴィア、ジャズプレーヤーは唸ったりハミングしたりする」の講義でした。何といっても嬉しかったのは、私がジャズの楽しさ面白さに取り憑かれた最初のアルバムがライオネル・ハンプトンの「スターダスト」だったのですが、先生がこの「ユニゾンハミング」の講義の一番最初にこの「スターダスト」を取り上げておられることでした。この曲は1947年、パサディナでの、ジーン・ノーマン主宰のジャムセッションを収録したライブ盤の中の表題曲なのですが、リーダーのライオネル・ハンプトンのソロは生涯最高の名演に位置付けられていますとともに、ベーシストのスラム・スチュワートにとってもこのセッションのソロは一世一代の名演になっていて、このアルバムによって彼独特のユニゾンハミングがより一層世間に認知されることになったのでした。

 

この講座では、ほかに、「メジャー・ホリー」と「鈴木勲」の二人のベーシストが取り上げられましたが、「ジェリコの戦い」のメジャー・ホリーのドーンとかズーンと鳴り響く重低音のベースとハミングを交えた堂々のソロは圧巻です。鈴木の演奏はさすがに海外経験が豊富なこともあり、前者2名に優とも劣らぬ名演(ユニゾンハミング)を聞かせてくれました。

 

 

 

 

 

 

(3)「セカンドリフ」について

 

 

 

 

 講座の「part-3」では、「ジャズのトリヴィア、セカンドリフ」が取り上げられました。先生の説明によると、「セカンドリフ」とは「曲によっては、曲のエンディングが近くなったころにその曲のテーマとは別の短めで親しみやすいメロディを挿入して、演奏の印象をより強くすることが行われるが、この短い挿入部分のことをセカンドテーマあるいはセカンドリフと呼ぶ」と言及され、きっちり定義された用語ではなく、それとなく流布した言葉だと説明されています。人気のある「ワン・オクロック・ジャンプ」には有名なセカンドリフが挿入されていて、メインテーマよりもこちらのセカンドリフの方が記憶に残りやすいという珍現象(オマケ)まで生じています。正にセカンドリフが印象的な曲は、「グリコの一粒で2度美味しい」曲と言えるでしょう。先生が取り上げられた曲の中では、鈴木章治とリズム・エースの「鈴懸の径」が印象的でした。あらためて聴いてみますと、イントロも良いのですが、曲の開始から4分後にこの曲を大ヒットさせた最大の要因となるセカンドリフが始まります。このセカンドリフの優れたアイディアを提供したピーナッツ・ハッコーの功績は大きいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

(4)「LPレコード鑑賞会〜魅惑のジャズ・サウンド(6)

 

 

 

 

当講座のオオトリを飾るレコードコンサートは、111日に県民活動センター小ホールに講座受講者の皆さんやジャズファンなど200名を越える方々を集めて開催されました。

 

 

 

 

 

 

会場風景(正面)

 

 

 

 

 

 

 

コンサートをバックで支える我が彩球オーディオ倶楽部のメンバーは、今回で6回目という事もあって準備万端手馴れたものでしたが各人の表情には緊張感が漲り、「845PP超ど級アンプ」の放つトリタンの光を受けた「アルテックスピーカー」その存在感が素晴らしいジャズ・サウンドへの期待感をいやが上にも盛り上げてくれています。

 

定刻、関口先生の軽妙洒脱な挨拶からスタートしました。

 

 

 

 

845PPアンプとアルテック604-8G

 

 

 

安藤・吉田の最強サラ回しコンビ

 

 

 

 

 

 

 

 

A.モノラルレコードの魅力

 

 

 

 

レコードの歴史的変遷とそれぞれの特徴のレクチャーの後、代表的なモノラルレコード6枚の演奏を鑑賞しました。

 

一般的にはステレオレコードの方が音が良いと理解されていますが、左右のスピーカーの中央に定位したモノラルの音は「音質の良し悪しを超えた重厚で迫力に満ちたもの」で楽器の位置の遠近感さえ感じられ、改めてその良さを実感できました。

 

@ オパス・デ・ジャズSavoy MG 12036より

 ユー・リーヴ・ミー・ブレスレス

 

A アナザー・オパスPrestige New Jazz 8244より

アナザー・オパス

 

B ソニー・ロリンズ vol.2Blue Note 1558より

 ホアイ・ドント・アイ、プア・バタフライ

 

C レニー・ニーハウスvol.1contemporary C-3516

 OJT盤)よりポイシアーナ

 

D リロイ・ウォークス (contemporary S-7542 OJT盤)

よりウォーク・オン

 

E 同ステレオ盤

 

 

 

 

 

 

B.日本のインディーズレーベル

 

 

 

 

規模的には小規模なマイナーであるが、メジャーにも擦り寄らず、時流におもねることもなく独自の方針でレコードを作ってきた三社の代表的なレコードが続きます。

 

幻の10インチ盤(デュクレテ・トムソンのズート・シムズ)の再発を果たした澤野工房の快挙。

 

@ デュクレテ・トムソンのズート・シムズDucretet Thomsons 10インチ再発盤)よりキャプテン・ジェッター

 

A 同イヴニング・イン・パリ

 

 

 

 

 

 

デュクレテ・トムソンの「ズート・シムズ」のジャケット

 

 

 

 

 

 

70年代、「楽しい」「スイングする」「創造的な」「個性的な」ジャズをコンセプトに、実力はあるがレコーディングの機会に恵まれなかった新進気鋭のプレーヤーやシンガーを積極的に起用してジャズ界に新風を吹き込んだスリー・ブラインド・マイス。

 

演奏もさることながらその優れた音質で、今日でもマニアの視聴用ソフトとしてよく使用されています。

 

@ ブルー・シティー(Three Blind Mice tbm2524 よりボディー・アンド・ソウル

 

A ミッドナイト・シュガー (Three Blind Mice tbm2523 よりザ・ニアネス・オブ・ユー

 

 

 

 

 

 

日本のインディーレーベルの中で外すことのできない一社、マシュマロ・レコード。ユニークな企画でどのアルバムにも上不社長のジャズに対する熱い情熱がこめられています。今回はテナーサックスのハービー・スチュワードのアルバムが紹介されました。

 

往年の名サックス奏者4人で構成されたフォア・ブラザーズの1人で(他にスタン・ゲッツ、ズート・シムズ、サージ・チャロフ)で、その実力は折り紙つきでしたが、内気で繊細な性格からか、まもなくグループを離れ居所もはっきりしなくなったようです。

 

その後僅かなきっかけを手がかりに本人に辿り着き、日本公演まで実現させたのも、上不社長のハービーに対する熱い思いの賜物でしょう。

 

 

 

 

 

 

今回のレコードコンサートを締めくくるに相応しい2曲、

 

@ ハービーズ・ヒア (Marshmallow MMEX-136-LP) よりドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア

 

A 同グッドバイ

優しいクラリネットのバラードを聴きながら素敵なコンサートは幕を下ろしました。

 

 

 

 

 

 

「ハービーズ・ヒア」のジャケット

 

 

 

 

 

 

 

 

2007年から通算9回を数える県活のジャズ講座も、今回のレコードコンサートでエンディングを迎えました。その間、関口先生のお陰で「ジャズの何たるか」や「その楽しみ方」を知り、ジャズファンとなられた方々は多数に上ると思います。ささやかではありますが、私達彩球オーディオ倶楽部でそのお手伝いができましたことは望外の喜びです。本当にありがとうございました。今後不定期でもこのような講座やレコードコンサートを企画して頂けることを、密かに願っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

関口ご夫妻と同窓の先輩及び彩球スタッフ

 

 

 

 

 

 

 

 

 使用機器 

 

 

 

 

スピーカーシステム ALTEC 612 604-8G(38p 同軸2Way)入り (安藤氏自作)

メインアンプ 845PP (横山氏自作)   6L6PP (石風氏自作)

プリアンプ LUX CL-35    レコードプレーヤー YAMAHA GT-750

カートリッジ Ortofon SPU-AE   MCトランス 磯貝氏自作 Ortofon 0.32M

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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