ジャズの聴き方楽しみ方

「LPレコード鑑賞会」

6月18日試聴会レポート

 

 

 

 

 

 

 

 

 関口英雄先生による「ジャズの聴き方楽しみ方」講座は平成19年から通算9年間にわたり開催され、平成27年にいったんエンディングとなりましたが、受講生のあつい講座継続の要望があったことと先生の講義再開に対する熱気溢れる情熱と、主催者である「公益財団法人いきいき埼玉」の英断が相まって、今年より「ジャズの聴き方楽しみ方―LPレコード鑑賞会」と銘打って再開されることとなりました。また今後についても、講義の冒頭に先生から「元気な内は(車の運転が可能な限りは)続けて行きたい」旨の嬉しいご表明があました。

 

 

 

 

 

 

今回の講座は下記の内容で実施されました。

日時 2017618日(日)13:3016:00

 場所 県民活動総合センター 小ホール

 演題 ジャズの聴き方楽しみ方「LPレコード鑑賞会」

 講師 関口英雄先生

 

 

 

 

このLPレコード鑑賞会について、「彩球オーディオ倶楽部」が同会場へのスピーカーの持ち込み及び設置、プレーヤー、アンプ類の設置等、ハード面で全面的に協賛支援致しましたので、以下ご報告申し上げます。

 

 

 

 

 

 

  

LPレコード鑑賞会」広報パネル

 

 

 

 

 

 

 

 

彩球オーディオ倶楽部の会員5名(安藤、五十嵐、石風、横山、吉田)は、当日9:00に会場裏手の駐車場に集合。それぞれ機材を会場小ホールに運搬の上、セッティングを開始しました。まず安藤さんにより、スピーカーの位置決め、セッティングが慎重に実施されました。次にアンプ台を事務局から借用してのアンプの設置。皿回しの吉田さんは、プレーヤーの設置場所を舞台手前に移動して皿回しの安定性の確認を実施致しました。過去の経験もあって、約1時間後にはほぼセッティングが終了致しました。

 

関口先生も13:00に会場入りされ、開演前にもう一度入念に最終調整を実施し、予定どおり13:30に順調にコンサートを開始する事が出来ました。

 

 

 

 

 

 

  

会場受付風景

 

 

 

 

 

 

 

 

 このジャズ講座の特色は何といっても、地元深谷市在住の関口英雄先生の若々しく、情熱あふれる講義内容ではないかと思います。先生は小学生の時以来、60有余年にわたってジャズを聴き続け、ジャズを心の友として歩んでこられた方です。

 

 講義に使用されたテキストはテーマ(先生の永年にわたるジャズ研究によって、良く吟味思考され、分類されたテーマ)毎に、数曲選曲されているのですが、その曲目、演奏者の紹介が種々のエピソードを交え懇切丁寧に分かり易く掲載されており、ジャズのなんたるかを、楽しく学ぶことが出来るものです。

 

 そして、実際の講義はジャズの本質を突かれた講義とともに、ウイットに富んだ、川柳、駄洒落等をまじえた軽妙洒脱なお話は、聞いていて思わず引き込まれてしまいます。

 

 

 

 

 

 

  

会場風景(ステージから観客席を望む)

 

 

 

 

 

 

 

 

 本講座の講義の中から、印象に残っている先生の名講義を2、3挙げてみますと、

 

(1)「山口克己氏の云うオリジナル盤」とは

 

誠文堂新光社「ジャズ名盤セクション」のなかで氏のオリジナル盤に関する記事に出会って先生が我が意を得た思いをされた内容で、山口氏は「オリジナル盤とはレコード会社が自ら企画・録音して商品化した盤のことで、ファーストプレス盤にこだわる要はなく、プレス技術の進歩もあり、後年にプレスされたものの方がきちんとしている場合もある。また、いわゆる再発盤や復刻版の中にも優秀で音の良い盤もあることを忘れてはならない」と述べている。

 

 

 

 

 

 

(2)「ヘレン・メリルがクリフォード・ブラウンの不慮の死の報に接しヨヨと泣き崩れてしまう」

 

 ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンが録音された1954年からクリフォード・ブラウンの不慮の死の1956年までを時系列に記載してみると、

 

(@)1954122225日、ヘレン・メリルの要望によりソロイストのクリフォード・ブラウンを迎え、全曲のアレンジ、指揮をクインシー・ジョーンズに依頼して、名盤「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」を録音。

 

(A)1955ブラウン・ローチクインテッド(マックス・ローチ、クリフォード・ブラウン、ハロルド・ランド、リッチー・パウエル、ジョージ・モロー)としてブラウンの最高傑作「スタディ・イン・ブラウン」を録音。

 

(B)1956年テナーのハロルド・ランドが抜け代わりにソニー・ロリンズが在籍。

 

(C)1956622日マックス・ローチはソニー・ロリンズを伴ってルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオに向かい、ロリンズ生涯の大傑作「サキソフォン・コロッサス」を録音。

 

(D)1956626日故郷のデラウェア州ウィルミントンにてジャムセッションに参加。

 

(E)翌627日午前3時にシカゴに向け(27日シカゴの「ブルー・ノート」に出演予定)、リッチー・パウエル夫妻の車に同乗、途中のペンシルバニア州の山道で折からの雨でスリップして崖下に転落、3人とも即死。

 

(F)歌手のヘレン・メリルはレコーディングのためスタジオに入っていたが、この報に接し、泣き崩れてしまい、録音どころではなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

(3)「マルチリード奏法」について

 

 古来、クラリネットやサックスなどのリード楽器奏者の中に、マルチリード奏者と呼ばれる人達がいて、文字どおり複数のリード楽器をこなす演奏者のことなのだが、これは、主にジャズ創生期のビッグバンド時代にフロントのリード楽器奏者の前に複数のリード楽器が置かれていて、奏者はこれらの楽器を持ち替えて演奏し、そのジャズサウンドに多彩化を促していたのであった。

 

エリントン・オーケストラのハリー・カーネイはクラリネット、バリトンサックス、バスクラリネットのマルチリード奏者だったし、またモダンジャズの時代でもソニー・スティットは曲目に応じアルトとテナーを使い分けているし、エリック・ドルフィーはフルート、アルトサックス、バスクラリネットを自在に使いこなしていたマルチリード奏者であった。

 

日本でも渡辺貞夫をはじめとして優れたマルチリード奏者多数存在するが、先生は今回「ライト・オー」というアルバムの「モリタート」を聞かれて(奏者の北村英治の豪快にスイングするバスクラリネット・プレイを聞かれて)、彼が単なるスイングジャズ専門のプレーヤーだけでなく、素晴らしい「マルチリード奏者」であることを再認識したと述べられています。

 

 

 

 

 

 

  

関口先生の講義風景

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の「LPレコード鑑賞会」で演奏された7枚のLPレコードと、16曲の曲目です。

 

 

 

 

1.モノラル時代の傑作盤

 

[サヴォイSavoyには珍しい美女ジャケットのモノラル盤]

「レコード1」テレフンケン・ブルース(ミルト・ジャクソン・シクステッド)

(1) テレフンケン・ブルース

(2) ブルース・ムード

 

[Blue Noteのモノラル盤]

「レコード2」ベース・オン・トップ(ポール・チェンバース)

(3) イエスタデイズ

 

[クリフォード・ブラウンの人気盤]

「レコード3」スタディ・イン・ブラウン(ブラウン・ローチ・クインテッド

(4) ジョージ・ディレンマ

(5) サンドゥ

 

 

 

 

 

 

  

「テレフンケン・ブルース」のジャッケット

 

 

 

 

 

2.雪辱を果たしたデューク・エリントン

 

「レコード4」ザ・ポピュラー・デューク・エリントン(MONO)

(6) テイク・ジ・A・トレイン

 

「レコード5」ザ・ポピュラー・デューク・エリントン(STEREO)

(7) テイク・ジ・A・トレイン

(8) アイ・ガット・イット・バッド

(9) ソフィスティケイテッド・レディ

(10) クリオール・ラブ・コール

 

 

 

 

 

 

3.日本のジャズレコード 異色の2枚

 

「レコード6」ザッツ・オールド・フィーリング(中本マリ)

(11) シャイニー・ストッキングス

(12) サムワン・トゥ・ウオッチ・オーヴァー・ミー

(13) ザット・オールド・フィーリング

(14) バードランドの子守歌

 

「レコード7」ライト・オー(北村英治・八城一夫トリオ)

(15) モリタート

(16) マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ

 

 

 

 

 

 

以上の曲目の中で、特に私が感銘感動をうけましたのは「ポール・チェンバース」と「中本マリ」でした。ポール・チェンバースのベースはその伸びやかな低音のなかに品のある奥行き感があって、非常に聴きやすかったです。中本マリのジャズは本場アメリカの女性ボーカリストのジャズとなんら遜色がなく、ビッグバンドの伴奏に良くマッチした素晴らしいものでした。先生がわざわざ最後に一曲「バードランドの子守歌」を追加された訳が良く理解できました。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

吉田さんによる再生装置の説明

 

 

 

 

 

 

今回は下記の再生装置を用意しました。

 

レコード・プレーヤー:YAMAHA GT750(吉田さん)

カートリッジ(モノ):Ortofon CA-25D(吉田さん)

カートリッジ(ステレオ):Ortofon SPU-AE(吉田さん)

MCトランス:Ortofon 0.32M(吉田さん)

プリアンプ:LUXMAN CL-34 duo-β circuit(五十嵐さん)

メインアンプ:前半使用アンプ 6L6Gプッシュプルアンプ(石風さん)

      後半使用アンプ 1619プッシュプルアンプ(五十嵐さん)

スピーカー:ALTEC 604-8G(安藤さん)

 エンクロージャーも安藤さん自作

 

 

 

 

 

 

  

6L6Gプッシュプルアンプ(石風さん)

 

 

 

 

 

 

  

1619プッシュプルアンプ(五十嵐さん)

「黒い機関車」の異名を持つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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